臨床工学研究室

研究室について

研究テーマ

医用工学的手法を用いて病態を解析し、診断?治療機器の開発や改良を行っています。具体的には,再生医療, 生命維持装置と生体との相互作用の検討および生体適合性のある生命維持装置の開発、携帯型人工腎臓の開発,網羅的遺伝子発現解析に基づく病態研究手法の確立とその応用、血液浄化装置の開発と評価、一酸化窒素?水素吸入療法の臨床応用,などを検討しています。患者個々の遺伝子の違いをもとに治療方針を決めるテーラーメード治療やバイオインフォーマテックスも研究課題の一つです。さらに最近は、水素ガスの臨床応用を目指した基礎的検討と臓器再生も目指した再生医療に力を入れています。

一酸化窒素や水素ガスによる血液透析膜表面およびECMOシステムの生体適合性の改善

血液透析膜の透析液側に一酸化窒素(NO)ガスを流し、透析膜表面を溶存ガス放出表面とすることで、透析膜表面の生体適合性を改善することを目的としています。また、体外式呼吸補助(ECMO)においては、長期間にわたり、抗凝固薬を使用しているため、出血のリスクがあります。体外循環中のみに抗凝固ができれば、長期間にわたり安心して使用できます。また、人工肺は疎水性の材料であり、生体適合性があまり高くありません。そこで、人工肺の吹送ガスに一酸化窒素(NO)ガスや水素ガスを流し、膜膜表面をガス放出表面とすることで、人工肺表面の生体適合性を改善することを目的としています。現在、いずれもラットを用いた血液透析システム?ECMOシステムを確立し、NOガスの効果を検討できるところまで来ました。臨床での応用を視野にいれ、ラットを用いた検討をさらに進めます。同時に水素の効果も検討しています。

水素吸入の保護効果

虚血再灌流傷害に対して、水素ガスや一酸化窒素ガスには保護効果があることがわかってきています。現在までの検討から、水素の保護効果には、特にミトコンドリアへの作用機序が重要であることがわかってきました。ミトコンドリア酸素活性/細胞代謝エネルギー分析装置を用いて研究を進め、水素は無酸素に暴露されたミトコンドリアのComplex IIを抑制できることが明らかになりました。水素の保護効果が、ミトコンドリアレベルでどのように作用し活性酸素の産生を抑えているのか明らかにするための検討を行っています。

運動療法における一酸化窒素と水素併用吸入の効果の検証

これまでの研究で、一酸化窒素ガスと水素ガスを併用吸入すると、それぞれの単独ガスよりも酸化ストレスを低減し、炎症による臓器障害を低減することも知られていますが、単独ガスでは効果が弱いことも知られています。現在、さまざまな急性疾患において、リハビリテーションを行う際の運動療法の効果がそこで、COPD?気管支喘息といった呼吸器疾患および心不全モデルに対して、一酸化窒素と水素の併用吸入を行うことで、効果が得られるかどうか、動物モデルを用いて検討しています。

腸内細菌が発生する水素の保護効果

腸内細菌が発生する水素ガスが体内の活性酸素を消去する効果があり、抗菌薬で腸内細菌を死滅させると活性酸素による病変が増悪することが分かりました。また、ヒトにおいては、難消化性糖類を摂取すると腸内細菌が活動し、多くの水素が産生されることが明らかになりました。ARDSのようは肺の炎症疾患では、腸内細菌では水素を産生するものの、呼気にはほとんど水素が排出されないことも明らかになりました。どのようにすれば、多くの水素を出すか、また、その水素は体にどのような効果があるのか、調べています。

PEEP模擬伸展刺激による人工呼吸誘発肺障害の解明

人工呼吸は患者の換気や酸素化が不十分な時に用いられますが、この人工呼吸による肺の過伸展や高濃度酸素吸入が肺傷害を引き起こし、人工呼吸誘発肺傷害(VILI)と呼ばれています。VILIメカニズムの解明とVILIを予防する人工呼吸の設定を最終目標とし、この研究ではin vitroの培養細胞伸展システムを用いて、機械的伸展が肺動脈血管内皮細胞に与える影響について、有害人工呼吸模擬伸展による遺伝子発現及び炎症性物質産生の時系列解析を行い、機械的伸展から炎症性物質産生に至るシグナル伝達経路を同定し、人工呼吸が肺障害を引き起こす過程の遺伝子発現経路の推定を行います。

メンバー

プロジェクト?研究業績

プロジェクト

研究業績

著書?論文

学会発表

特許