ゲノム(DNA)、トランスクリプトーム(RNA)、プロテオーム(タンパク質)、メタボローム(代謝化合物)などを対象に、複数種類のデータを組み合わせた解析を行う研究室です。性質の異なるデータを横断的に解析し、より精度の高い情報や新たな知識の獲得を目指します。新たな生命現象の解明や病気の発症メカニズムの解明、さらには治療薬や治療法の開発につなげていきます。
- 教授 : 河野 信
- 准教授 : 原 雄一郎
DNA?RNAを測定するシーケンサやタンパク質?代謝化合物を測定する質量分析計の高性能化により、短時間で大量のデータが得られるようになりました。これらのデータはデータベースに保存され、インターネットを通じて誰もが利用できるように共有されています。これらの性質が異なるデータを統合し、新たな生命現象の発見につなげていきます。ただし、それぞれのデータには分子の性質や測定方法の違いがあるため、それぞれを適切に扱う必要があります。複数階層のデータをどのようにモデル化し統合解析すればよいか研究しています。
また、これら性質の異なるデータを取り扱う際に、データを探せる(Findable)、自由に入手できる(Accessible)、お互いにつながる(Interoperable)、使える(Re-usable)ことが重要です。これらを実現するためのデータ表現やデータの格納方法についても研究しています。
データサイエンスの醍醐味は様々なデータを扱いながら、関連分野はもちろん数学やプログラミング、統計学などの知識を有機的に結びつけ、データの吟味を重ねながら、実社会で評価または実用可能な「知」の形をつくり上げていくところにあります。データのあるところ、分野の垣根を越えて広がりのある研究を展開できるのも大きな魅力です。研究室ではデータと真摯に向き合い、新しい「知」の形を求めて研究を進めています。
- 教授 : 島津 秀康
- 准教授 : 力丸 佑紀
分野を問わずいかなるデータも取得からその記述、解析からモデリングとその解釈、評価にいたるまで共通する一連の流れを経て、データから「知」が形づくられていきます。言いかえれば現象の現身であるデータの構造や特徴を的確に捉えて推論を重ね、当該分野の知識に相補的な「知」の創出を目指す過程がデータサイエンスのひとつの考え方です。研究室では各々が取り組む興味や分野は違っても、データという暗黙のうちに蓄積された知を形式化された知として表出化するための基盤を共有し、ある特定のデータのみに精通した専門家よりも、多様なデータを紡ぎ「知」を編める専門家を目指します。そのため、研究室で取り組んでいる課題はデータサイエンスの基盤を支える理論的なものから、国内外の様々な分野の専門家と協働する分野横断型のものまで多岐にわたります。
複雑な生命現象を「見える化」して解明する研究室です。生命現象は様々な分子が担う時間と空間のパターンとして認識されます。それらを全て「見える」ようにできれば、神経機能とその障害、癌などの生命現象の理解は格段に深まります。そのような見える化の方法(可視化技術)を、見るための道具(蛍光タンパク質などのプローブ)作りから、得られた可視化像の意味づけ(情報科学)までの広範なアプローチで生命現象のデータサイエンスに挑みます。
- 教授 : 岡 浩太郎
- 教授 : 谷森 達
- 准教授 : 新藤 豊
細胞内の様々な生命現象を「見る対象を決めてイメージングする」ことと「見る対象を決めないでイメージングする」2つのアプローチで研究を進めています。
「見る対象を決めてイメージングする」(Bioimaging with targets)研究では、これまでに低分子有機プローブを利用して、細胞内Mgイオンの動態を可視化する研究で世界をリードしてきました。また蛍光タンパク質型プローブを利用して、細胞内セカンドメッセンジャーの同時可視化、エネルギー代謝とミトコンドリア機能の可視化、線虫などの神経細胞内での情報伝達の可視化などの研究を進めています。
また「見る対象を決めないでイメージングする」(Bioimaging without targets)研究では、ラマンイメージングやハイパースペクトルカメラを利用したイメージングの研究にも取り組んでいます。この研究では、例えば染色していない脳標本から脳地図を自動生成する研究などを進めており、画像解析を中心としたインフォマティクスを利用しています。
人工知能研究室は、複雑な生命科学および医療の課題を解明するための革新的なAI(人工知能)とデータサイエンスの技術を創出しています。深層学習や生成AI、そして統計的モデリングを駆使して、生命現象の解析を深化させ、新規の医療技術やバイオテクノロジーの発展を追求しています。未踏の生命科学?医科学の課題解明、複雑な生物学的データの評価、そして未来の医療技術の改革へと結びつけていくことが、我々の使命であり、目指す未来なのです。
- 教授 : 榊原 康文
私たちの研究室は、人工知能とバイオインフォマティクスの領域で卓越した研究を行うことを目指しています。
近年、情報技術の急激な進歩にともなって、人間の道具としての情報技術は終わりをつげ、我々の共生体へと変貌を遂げつつあります。ドラスティックな変化の中で、私たちの研究室は、科学的知識を増やすだけではなく、新たな視点から生命や医療を理解し、それがもたらす意味を再定義することを希求しています。それはまさに、情報技術が人間の拡張体(Human Augmentation)となり、生命?医療の理解を深め、社会に新たな価値をもたらす、新たな地平線の開拓に他なりません。
研究室の雰囲気は、各自が独立して高度な情報技術を身につける一方で、新たな発見を追求するためにチームで積極的な討論を密に行うことを重視しています。毎週行われるゼミでは、自分の研究を発表したり、学問書を用いた輪講を行う事で、進捗度合いの確認や知識のアップデートを行います。
人工知能などの情報技術を用いて、生物の遺伝子を改造して様々な目的に利用する「生物工学」の研究を行います。例えば、生体内ではたらくタンパク質などの分子を改造して新たな機能をもたせる「生体分子設計」や、生物の細胞を物質生産の工場へと改造する「バイオものづくり」のための情報技術を開発します。ゲノムを始めとする多種多様なビッグデータを人工知能に学習させ、生物を効率よく改造するための方法を導き出します。生物のもつ力を最大限に引き出し、医薬品や化成品といった人類に役立つ物質を素早くスマートに創り出せる未来を目指します。
- 教授 : 齋藤 裕
- 助教 : 飯田 慎仁
- 助教 : 来見田 遥一
生物工学のためのバイオインフォマティクス「Bioinformatics for Bioengineering」をモットーに、ビッグデータ解析から生命の法則性を解き明かす「Reverse Bioengineering」と、その法則性を生体分子の改変や制御に利用する「Forward Bioengineering」の2つのアプローチで研究しています。生物工学の様々な問題を解くための人工知能、機械学習、アルゴリズム等の技術開発はもちろん、実験系研究者との共同研究を通した技術の応用展開も大事にしています。また、データがなければ何もできない人工知能の欠点を踏まえ、データを自ら生み出せる分子シミュレーションなどの生物物理的手法を積極的に活用します。さらに、生命科学における実験データ取得の効率化や信頼性の向上にむけて、ロボットを用いた実験自動化(ラボオートメーション)のための人工知能技術の開発も行っています。
皆さんが普段から触れる?使う?見る?食べるもの、その至るところに“柔らかい物質=ソフトマター”が溢れています。これまで様々な物質が作られてきましたが、コンピュータやスパコンを用いることで、その内部に潜む「分子」のかたちや動きを仮想的に視たり数値化することができるようになりました。そこで私たちは、データサイエンスを使ってコンピュータから新しい物質を見つけ出し、人類の未来に資する新材料創成を目指しています。
- 教授 : 渡辺 豪
- 講師 : 石井 良樹
液晶、高分子やタンパク質、あるいは溶液に含まれる有機?無機の物質をターゲットとしてコンピュータ上で現象の理由を知り、目的の材料を創造する科学を中心に研究を展開しています。研究室では主に、分子という非常に小さい単位をコンピュータ上で動かす計算手法(分子シミュレーション)を使っています。研究室のメンバーの得意な分野はまちまちなので、壁にぶつかったときは、他の人ともコミュニケーションをとりながら一緒に検討して乗り越えていきます。思いがけない連鎖反応というのは『分子同士』だけではなく『メンバー同士』でも起きたりしますので、そんなきっかけを逃さぬように話をする機会は昼も夜もたくさん作って、和気あいあいとした研究室にしたいと思っています。
当研究室では、医療データの収集、活用、分析に関する研究を行っています。医療データは、日々の患者の診療によって取得され、電子カルテ等で管理されています。このデータは、治療法の効果検証や新しい治療法の開発、医療の質の評価、医療安全管理、病院経営など、医療の様々な分野での活用が期待されています。さらに、医療データ以外の健康情報と組み合わせることで、新たな価値を生み出す可能性もあります。医療データの課題や可能性を考究し、より良い医療の提供や人々の健康増進に貢献していくことを目指しています。
- 講師 : 荒井 康夫
医療の高度化?複雑化に伴い、医療の質を測定?評価するという概念が急速に広まりつつあります。医療の質とは、提供される医療の質、提供組織の質、組織構成員の質など多面的なものです。医療提供の過程で得られるデータを活用し、「医療の質」を可視化するための技術や知識を検討します。様々な医療職種とのコラボレーションを行います。また、医療機関における医療情報の管理体制、医療情報の標準規格、医療情報を分類するコード、医療情報を扱う情報システムに求められる要件や構造も研究対象です。電子カルテや医療機器のメーカーとも連携していきたいと考えています。
私たちの研究室では、生命情報を活用することで生命に隠されているデザインを解明し、効果的なゲノム医療と効率的な創薬を実現するとともに、個々人の個性を理解し社会還元するための研究開発を行います。技術革新により、昨今では生命に関する多様かつ膨大なデータが得られるようになりました。一方で、生命を表現するデータは、セントラルドグマに表されるように、階層的かつ複雑な関連性を有しています。これらのデータを理解しやすく表現し、使いやすくすること、つまり情報をデザインすることで、未知の生体メカニズムに迫りたいと考えています。
- 教授 : 鎌田 真由美
- 助教 : 牧垣 秀一朗
近年の技術進歩により、ミクロな分子挙動からマクロな人の行動まで、幅広いデータを取得できるようになりました。表現が異なるこれらのデータを統合的に扱うことで、生命機序を深く理解できる可能性があります。私たちは、これら多階層データを統合活用可能な形に変換し、新たな知識を見つけ出すための技術開発に取り組みます。
複雑かつ巧妙な生命のデザインを解き明かすためには、データを統合するためのデータモデルの開発や、膨大なデータからの知識発見および社会還元を可能にするような汎用的な可視化表現とプラットフォームの開発が必要です。このプラットフォームとデータサイエンスを活用することで、難病?稀少疾患をはじめとした疾患の機序だけでなく、日常生活で感じるような感情や振る舞いの違いといった、人の個性を明らかにすることを目指します。