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腎盂?尿管がんとは(病気の見通し:予後)

腎臓で作られた尿は腎盂という空間に集まり、そこから尿管という細い管を通り膀胱に運ばれます【図1】。腎盂と尿管の壁は内側から粘膜、粘膜下層、筋層、漿膜という4つの層からなっていますが【図2】、腎盂?尿管がんの約90%は、粘膜の表面にある尿路上皮細胞から発生し、"尿路上皮がん"と呼ばれます。尿路上皮がんは、多中心性発生といって尿路上皮に覆われた臓器、つまり腎盂、尿管、膀胱、尿道に多発するのが特徴です。粘膜にできたがんは、進行すると粘膜下層から筋層に入り込み、さらに大きくなると漿膜を突き抜けて全身に拡がっていきます。腎盂?尿管は壁が薄いため周囲に拡がりやすく、比較的早期にリンパ節や肺、肝臓、骨などに転移します。なお、腎盂?尿管がんには尿路上皮がんのほかに、扁平上皮がん、腺がんなどがあります。

【図1】腎盂と尿管
【図1】腎盂と尿管
【図2】腎盂?尿管の壁(断面)
【図2】腎盂?尿管の壁(断面)

腎盂?尿管腫瘍の治療法

1. 手術療法

腎盂?尿管は同じ尿路上皮でできているため、腫瘍が発症した場合、同じ側の尿路に再発の可能性があります。そのため、手術法は腎臓と尿管、膀胱の一部を一塊にして摘出する腎尿管全摘除術?膀胱部分切除術とリンパ節郭清術が標準術式となります。当院ではロボット手術のほかに、腹腔鏡下手術?開腹手術も行なっております。それぞれの適応に関しては担当医にお尋ねください。

ロボット支援下または腹腔鏡下 腎尿管摘除術+膀胱部分切除術とは

腎尿管摘除術+膀胱部分切除術は腎盂?尿管がんに対する現在の標準的な治療法で、患側の腎臓、尿管とともに、尿管がつながっている膀胱の一部も一緒に切除する手術です【図3、4】。(このように広範囲の切除が必要な理由は、たとえば腎盂にがんができた場合、同時あるいは後になって尿管や膀胱にがんが発生することがあり、その際、がんを取り残したり、早期の発見、治療が困難になったりするためです。)
この手術を皮膚に開けた3~5ヶ所ほどの穴から炭酸ガスでお腹を膨らませながら、内視鏡と細長い手術器具を使用してロボット支援下または腹腔鏡下で腎尿管摘除術+膀胱部分切除術といいます。検体を対外に出すために数cmの切開を行います。

【図3】手術の創(左側摘出の一例)
【図3】手術の創(左側摘出の一例)
【図4】摘出範囲(左側の場合)
【図4】摘出範囲(左側の場合)

#創の位置は症例により若干異なります

2. その他の治療法

筋層非浸潤性腫瘍の治療

基本的には腎尿管全摘除術?膀胱部分切除術が治療の基本となりますが、患者さまの病気を総合的に判断して手術の適応を決定いたします。尿管鏡検査などにより尿管腫瘍(かつ筋層非浸潤性)と診断された場合、尿管部分切除術を行うことがありますが、適応は極限られます。また、筋層非浸潤性腫瘍のうち上皮内がんは、腫瘍の範囲が不明なことが多いため、BCGによる腎盂内注入療法を行うこともあります。

筋層浸潤性腫瘍の治療

CT、MRIなどで転移の有無を調べ、臨床病期を決定したのち治療計画が立てられます。臨床病期Ⅲ期までであれば、手術療法を中心に化学療法を組み合わせた治療が選択されます。年齢、病期、病態により化学療法のみを行なう場合もあります。

転移がある場合の治療

原則的に同じく尿路上皮癌である膀胱癌の治療に準じて行います。
抗がん剤によるシスプラチンを主体とした化学療法(GC療法、MVAC療法、dd-MVAC療法)や免疫チェックポイント阻害剤(アベルマブ、ペムブロリズマブ)、また抗体薬物複合体エンホルツマブベドチンやFGFR阻害薬(エルダフィチニブ)による単剤または併用療法などが行われております。

【表1】病期別治療法(まとめ)

病期別の治療 BCG 尿管部分切除
(尿管腫瘍)
腎尿管全摘除術
膀胱部分切除
化学療法
放射線療法
Cis期
平坦な上皮内腫瘍
   
a期
乳頭状で上皮にとどまる
   
Ⅰ期
粘膜におよぶ
   
Ⅱ期
筋層内にとどまる
     
Ⅲ期
脂肪層または腎実質におよぶ
   
Ⅳ期
腎周囲や隣接臓器におよぶか
リンパ節、他臓器に転移がある