医療系研究科在学生が日本水処理生物学会第60回大会でベストプレゼンテーション賞を受賞しました。

本学修士課程2年の神原栞さん(指導教員:清和成 教授)が、日本水処理生物学会第60回大会2024年11月1日~11月3日姫路市市民会館)にて研究発表を行い、ベストプレゼンテーション賞を受賞しました。

神原さんは、『環境DNA解析による都市域に生息する鼠族検出の試み』について発表を行いました。

衛生動物が媒介する感染症が世界中で問題になっています。
このような感染症の蔓延を防止するためには、病原体媒介動物をモニタリングし、防除することが必要ですが、目視や捕獲による従来のモニタリング方法では、膨大な時間、労力および費用が必要となることから、簡便なモニタリング方法の確立が求められています。
我々は、環境DNA(eDNA)解析に着目し、これまでにeDNA解析による鼠族検出手法を確立して報告してきました。
今回は、この手法を様々な都市環境サンプルに適用し、鼠族の検出を試みた結果を報告しました。

その結果、水試料はqPCRで定量限界以下ながらGapdh遺伝子の増幅が認められた試料もありましたが、雨水排水を除くすべての試料で陰性でした。
雨水排水ではGapdh遺伝子が3.03×106 copies/L検出されました。より高感度に検出可能なddPCR法を適用した結果、10検体で1.81×102 - 1.22×103 copies/Lの定量結果が得られましたが、清掃工場排水は陰性でした。清掃工場ではゴミ収集車の洗浄に大量の水を使用するため、採取した試料中の鼠族DNAが希釈され、検出できなかったものと推測されます。
土壌試料については、8検体中5検体から鼠族DNAが検出されました。このうち鼠の存在が確認された地点の土壌では5.95×104 - 1.16×105 copies/kgと高濃度で検出されました。
一方、巣穴が確認された地点の土壌では、陽性1地点、陰性1地点でした。これらの採取地点では、鼠の存在を確認できなかったことから、すでに放棄された巣穴であった可能性があり、結果として低濃度での検出または非検出になったと考えられます。

今後は骨成熟の時期の推定にさらなる検討が必要であるため、研究を進めてまいりたいと思います。

今後は本手法の時間的感度を検証し、将来的には検出された鼠のeDNA濃度から鼠の個体数の推定につなげたいと考えています。