呼吸器関連や循環作動薬の調整、栄養及び水分に係る薬剤の調整など、非常に多くの特定行為が集中治療に関連するものであり、私たち集中治療医の業務軽減という意味で、とても期待しています。一方で、看護師にとって特定行為研修を修了するメリットってなんでしょうか。なぜなら昇圧剤や鎮静剤などは、既に日々のケアの中で医師の指示のもと、投与量を調整しているからです。しかしそれはあくまで「こうなったら上げ、逆にこうなったら下げる」といった医師から与えられたアルゴリズムに従った行為にすぎません。
私たちが特定看護師に求めるスキルは、同じような状況でも病態を推論しアセスメントをしたうえで調整する力です。ある事象に「なぜだろう」という思考力を働かせ、自分なりの解を求めることで、同じ行為をしていてもその腹落ち感が違うし、それを周囲の同僚や医師などへ共有したり議論したりすることで、より質の高い医療につながると思います。
チーム医療を推進していくと感じるのは、その中に入ってくる看護師たちの“バリュー（価値）の高さ”ですね。実は医療って治療の本幹の部分はあまり大きな変化はないんです。 たとえば肺炎でも癌でも“入院して治療する”という本幹が決まると、そのことはよほどの事がない限り最後まで変化しませんが、患者さんは入院中に食欲や腸の様子、あるいは感情や睡眠の様子など、随伴する諸問題は日々たくさん変化します。そしてこの部分が実は医療の中で非常に大きなウェイトを占めていて、言ってしまえば医師より看護師がこの問題の気づきや解決にとても重要な役割を果たしています。
このようなチームの中で存在感を発揮する看護師が、さらに研鑽をつみ、特定行為などができるようになると、その看護師の持つバリューは、患者さんたちにとって、さらに大きなものになります。世の中に看護師のバリューの高さを示してもらいたいです。
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