福田和也
助教
福田 和也
Kazuya
Fukuda

主な研究テーマ

魚類の行動と脳に注目して、社会行動の進化を探る

魚が好きな皆さんは、水槽や海の中で彼らが小競り合いをしたり、ペアで仲良くしているところを見たことがあるかも知れません。魚にも我々ヒトと同じように、自分が置かれている社会的な状況や出会った相手がどこの誰なのかを認識して、その場に応じた行動をする能力を持つ種がいます。こういった社会的行動は、なぜ進化してきたのでしょうか?それは、我々ヒトが持つ社会的な感性と同じメカニズムに制御されているのでしょうか?そうだとすれば、ヒトが持つ高度に発達した社会性?精神活動?感情の進化的起源は魚にまで遡ることができるのでしょうか?そんなことに興味を持ち、魚の生態?行動を調査して「なぜその行動が進化したのか?」を考察したり、脳の解剖?分子メカニズム?遺伝子発現などを調べて「どのようにその行動が制御されているのか」を多角的に探索しています。
福田_研究1-1群れで生活しながらも、一夫一妻関係を保つハゼ
福田_研究1-2魚の動きを追跡して、水槽内での個体関係を推定する
福田_研究1-3脳内の分子を様々な手法で染色し、局在や神経連絡を調べる

魚類の行動や脳研究を実社会に生かす

 多くの魚たちが接する場所では、個体関係が魚の生理状態に影響を持ち始めることがあります。誰かの行動によって自分がストレスを受けることもあるでしょうし、反対に自分の行動によって誰かが助かることもあるでしょう。そういった魚たちの関係性を生み出すメカニズムを理解し、うまくコントロールしてあげることで、水産の現場に活きる基礎研究を目指しています。その他、水産有用魚種の動態や繁殖生態を調べることで、資源量管理や養殖方法の確立を目指す研究にも取り組んでいます。
 また、細部は異なれど、脊椎動物を通して脳の基本的な設計は保存されています。魚の脳と行動の関係に注目することで、哺乳類などの実験動物とは異なる実験系から、ヒトが直面するいくつかの疾患や傷害の根本的なメカニズムを理解することができるのではないかと考えて研究に取り組んでいます。
福田_研究2-1魚なのに陸上進出するトビハゼは喉が乾きそう (鳥取大学 椋田准教授グループとの共同研究)
福田_研究2-2あるハゼ科魚類の脳。基本的な構成要素は、脊椎動物を通して広く保存されている
福田_研究2-3体循環血中の高分子を蛍光標識して、脳との関係を調査する。光って見えるものが体循環血液 (血管)。鳥取大学 椋田准教授グループとの共同研究

広い視点から、動物の行動?性?生殖細胞の関係を理解する

生物の中には一生の間に自身の性を変えたり、雌雄どちらの性としても同時に繁殖可能な生き物が存在します。その中でも、特に社会的状況に応じて性を転換する魚類に注目して、その進化プロセスを考察したり、状況判断から性転換に結びつける至近的メカニズムを研究しています。また、動物の進化史を広い視点から俯瞰すると、より多様な性決定のメカニズムが見えてきます。我々ヒトを含む左右相称動物の基部で分岐したと考えられている無腸動物に注目して、生殖細胞の発生学的メカニズムを単一細胞レベルで比較する研究に取り組んでいます。
福田_研究3-1社会状況に応じて性転換をするハゼ
福田_研究3-2左右相称動物の基部で分岐したと考えられている無腸動物の一種 (広島大学 田川准教授、有本助教のグループとの共同研究)
福田_研究3-3注目する細胞を、単一レベルに分散して解析する


担当科目

経歴?業績等

主な経歴

  • 東京海洋大学 海洋科学技術研究科 博士後期課程修了(海洋科学博士)
  • 名古屋大学 大学院生命農学研究科 日本学術振興会特別研究員
  • 広島大学 大学院統合生命科学研究科 附属臨海実験所 助教
  • 博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@ 海洋生命科学部 助教

主な業績

論文
  • Mori T, Fukuda K, Ohtsuka S, Yamauchi S, Yoshinaga T (2022) Reproductive behavior and alternative reproductive strategy in the deep-sea snailish, Careproctus pellucidus. Mar Biol 169:42
  • Fukuda K, Sunobe T (2020) Group structure and putative mating system of three hermaphrodite gobiid fish, Priolepis akihitoi, Trimma emeryi, and Trimma hayashii (Actinopterygii: Gobiiformes).Ichthyol Res 67:552–558
  • Tomatsu S, Ogiso K, Fukuda K, Deki M, Dewa S, Manabe H, Sakurai M, Shinomiya A, Sunobe T (2018) Multi?male group and bidirectional sex change in the gobiid fish, Trimma caudomaculatum. Ichthyol Res 65:502–506
  • Fukuda K, Tanazawa T, Sunobe T (2017) Polygynous mating system and field evidence for bidirectional sex change in the gobiid fish Trimma grammistes. IJPAZ5:92–99
  • Fukuda K, Sunobe T (2017) Basic methods for the study of reproductive ecology of fish in aquarium: live fish collection, identification, and observation of reproduction. JoVE 125:e55964
  • Sunobe T, Sado T, Hagiwara K, Manabe H, Suzuki T, Kobayashi Y, Sakurai M, Dewa S, Matsuoka M, Shinomiya A, Fukuda K, Miya M (2017) Evolution of bidirectional sex change and gonochorism in fishes of the gobiid genera Trimma, Priolepis, and Trimmatom. Sci Nat 104
  • Fukuda K, Manabe H, Sakurai M, Dewa S, Shinomiya A, Sunobe T (2017) Monogamous mating system and sexuality in the gobiid fish, Trimma marinae (Actinopterygii: Gobiidae). J Ethol 35:121–130
MISC
  • 福田和也 (2022) 脳と行動からハゼのこころを探る-ベニハゼ類の配偶システムに注目して-.月刊海洋 54:141–147
  • 福田和也, 邉見由美 (2022) なぜ今ハゼ研究なのか?-ハゼに見る多様性の魅力と研究モデルとしての可能性-. 月刊海洋 54:87–94
  • 福田和也, 有本飛鳥, 田川訓史 (2021) シングルセル解析の進歩と進化発生生物学研究における活用. Precision Medicine 4:759–762