ご挨拶

知恵と力を結集し、
母校愛を育む記念事業に

宮下 俊之
前医学部長
分子遺伝学 教授
宮下 俊之
(みやした?としゆき)

博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@医学部は、2020年にいよいよ創立50周年を迎えます。理想の医療?医学教育を追究して歩んできた半世紀を振り返りつつ、今後のさらなる飛躍をめざす重要な節目に、本学部では創立50周年記念事業を実施いたします。本事業を企画?運営していくための組織として、医学部創立50周年記念事業企画委員会(統括委員長:小泉和三郎教授)を設置しました。また、事業の大きな柱である記念行事の開催および記念誌の発行を実現するために、記念行事実行委員会(委員長:浅利靖教授)、記念誌編集委員会(委員長:天羽康之教授)を立ち上げました。私は医学部創立50周年記念事業企画委員会の顧問の一人に名を連ねさせていただいております。記念事業の成功のために力を尽くしていく所存です。どうぞ関係者の皆様のご指導とご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。

 私は自然豊かな長野県飯田市に生まれ、昆虫をはじめとする様々な生き物に親しみながら育ちました。生物分野の研究者になることを夢見て東京大学に入りましたが、2年生の後期に医学の道に進むことに決めました。同じ生命について学ぶのなら、人間と正面から向き合い、病気の治療を通して世の中に貢献したいと考えたのです。

 学生時代、勉強の傍ら夢中になったのは山岳部の活動です。特に4、5年生のときには年間50日あまりを山で過ごし、夏季には東大医学部が北アルプスの涸沢に開設する登山者のための診療所で、先輩医師を手伝う仕事も経験しました。このとき、山で命を守るためには、仲間とのチームワークやコミュニケーション能力、そして仲間と一緒に山に登るには、自身の体調管理が重要となることを身をもって学べたことが、現在の仕事にも通じる教訓となっています。

 東大医学部卒業後は、もともと子どもが好きだったことに加え、人の体全体を診ることができる点に魅力を感じて、小児科医になりました。臨床医の仕事はやりがいもあり、充実した毎日を送っていましたが、ある遺伝病患者さんとの出会いをきっかけに遺伝子解析に興味を持ち、研究者へ転身しました。米国ペンシルバニア大学などに4年あまり研究留学し、当時の生命科学研究分野の話題をさらっていたアポトーシスに関する先端研究に携われたことは貴重な経験です。

 その後、日本に帰国して分子遺伝学の研究者として活動するうちに、やがて自分の経験を次代の人材育成?教育に生かしたいと考えるようになり、2007年に博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@医学部分子遺伝学の教授に応募しました。博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@の学生に最初に接した印象は、素直で穏やかな性格の持ち主が多いということでした。そんな若者たちを、将来多くの命を救う医師に育てる教育者の仕事は喜びに満ちたものであり、今も変わらぬやりがいを私に与えてくれています。

 さて、本学部における50年という歳月は、そこで学んだ卒業生が社会でキャリアを積み、そのうちの何名かが母校の教授となって教室の長になるのに要する期間と言えます。この一つのサイクルを初めて迎える意味でも、創立50周年は本学部にとって大きな節目と言えましょう。偶然ではありますが、その瞬間を医学部長として迎える責任の重さに、身の引き締まる思いがします。学部の歴史を築いてきた多くの先達をはじめ、すべての関係者に喜んでいただける記念事業の実現に力を尽くすことが、自身に課せられた使命であると心得ております。多くのご意見やアドバイスに真摯に耳を傾け、話し合いを重ねつつ、学部一体となって事業を前進させていきたいと考えています。

 今、私が強く願っているのは、この記念事業を学生の皆さんや卒業生の方々の母校愛や誇りを、さらに大きく育む機会にしていくことです。そのためのアイデアの一つとして、例えば本学部の発展に尽力されてきた歴代の医学部長の先生方による座談会のようなイベントを検討してみても良いかと思います。また、今回の創立50周年事業は、本学部の存在感やブランド力を高める好機でもありますから、ホームページをはじめとする各種メディアをこれまで以上にうまく活用して、世界に情報発信していくことも重要だと考えます。皆さんの知恵と力を結集して、この記念すべき事業をぜひとも盛り上げていきましょう。

宮下 俊之