研究者育成講義

研究者育成を目指した
教育プログラム

創薬科学への招待

1年次前期の必修科目で、国公立や企業の研究所を訪ね、そこで活躍する研究者にインタビュー。研究内容や研究環境などを聞き、将来像を具体的にイメージできるようにします。準備から見学後のまとめまで、スモール?グループ?ディスカッションによる討議を繰り返し、論理的な思考や議論する力も養います。過去には国立研究開発法人国立がん研究センター研究所のほか、理化学研究所、化粧品会社の研究所、製薬会社の研究所を訪問しました。
このほか薬学部基礎薬学分野の研究室の研究活動について調べ、発表するプログラムも用意されています。

創薬科学への招待

製薬企業の研究所を見学

生命創薬科学研究概説

1年次後期の必修科目で、薬学部での研究の面白さや研究の本質を知り、様々な分野の研究に興味を持つことで研究者になる意欲を高める講義です。生命科学分野でノーベル賞を受賞した業績についての基礎知識、その領域の学問の発展過程などを学びます。
2016年度はノーベル賞の生理学?医学賞、化学賞を受賞した研究業績と受賞者の人間ドラマを学び、ノーベル賞の業績を題材に遺伝子工学、がん、RNA、免疫などの研究の発展、さらに分子生物学の全体像を知るプログラムなどが用意されました。

生命創薬科学Ⅰ?Ⅱ

2年次前期?後期にわたる必修科目で、薬学部基礎薬学分野の研究室それぞれが取り組んでいる研究内容を、担当教員が直接紹介するユニークなもの。毎回異なる研究室を取り上げることで、1年間で生命科学および創薬科学領域の多様な研究の全体像が把握できます。さらに 最終回に薬学部の先輩を招き、研究の魅力ややりがいを聞く機会も設けられました。
研究に必要な薬学基礎系科目の重要性を理解し、研究を進める過程で必要な論理的思考、問題発見および解決能力の必要性を学ぶのも講義の目的です。

創薬情報科学?構造生命科学?理論分子設計学

3年次には生命科学?創薬科学研究でのコンピュータの活用を中心に、専門性の高い情報教育を行います。
「創薬情報科学」は創薬研究に必要な情報処理技術とその基礎を理解する科目。さらに「構造生命科学」で生命現象の主役であるタンパク質の構造?機能の解析、「理論分子設計学」では新規医薬品開発に利用する分子モデリング、リガンドドッキングなどを学んでいきます。
これらは講義に加え、コンピュータを使った演習により基礎技術まで習得することで、次世代の研究に活躍できる人材の育成を目指しています。

研究はここが楽しい

微生物薬品製造学教室

細胞内の中性脂質の蓄積を阻害する薬を目指し、候補物質の効き方を詳しく調べています。

創薬研究を目指して入学した私は、「自分が採取した微生物から薬に役立つ物質を探す」という微生物学実習に感銘を受け、4年次の研究室も、微生物由来の物質を対象に創薬に取り組む微生物薬品製造学教室を選びました。
現在のテーマは薬の候補物質の効き方の研究。細胞内の中性脂質の蓄積阻害薬になると期待されているdinapinoneA(DPA)が、体内でどんな仕組みで効くのかを調べています。DPAには分子構造は同じで、軸異性体の関係にあるDPA1とDPA2があり、これらは生体内で中性脂質の蓄積を阻害する効果が異なるだけでなく、両者を一定の割合で混合すると阻害の効果が非常に高まるといった特徴があります。こうした作用を解析することで、DPAの生体内での標的分子=結合しているタンパク質と思われる候補物質を見つけ出しました。
薬学部4年生のとき、この研究を第138年会日本薬学会(2018年3月)のポスター発表に応募。審査演題の約10%の受賞率という学生優秀発表賞を受賞しました。翌年はその研究をさらに発展させた内容で、第139年会日本薬学会(2019年3月)のポスター発表において再び同賞を受賞できました。

奥畑 颯眞さん

薬学研究科修士課程2年(取材時)
神奈川県?私立桐蔭学園高等学校出身

研究はここが楽しい

医薬品化学教室

学部学生のときから続けてきた触媒反応の開発に関する研究を米国化学会に論文で報告。

医薬品化学研究室では物質を原子?分子レベルで制御することで、医薬品や農薬などの製造に役立つ人工触媒や新反応の開発、新薬の開発に繋がる生物活性物質の開発に関わる研究を行っています。私は学部学生の頃から、生体分子である糖の効率的化学変換を可能とする有機ホウ素化合物の触媒反応の開発に携わっています。研究室に配属直後は私が学んできた学問のレベルと最先端の研究のレベルとの差に戸惑いましたが、先生方や先輩の皆さんにご指導いただくとともに、研究室の仲間と議論を交わしていく中で、自然と研究者としての物の考え方やあるべき姿を身につけていくことができました。
現在は博士後期課程2年の学生ですが、学位取得のために研究中心の毎日を送っています。一緒にプロジェクトに取り組んでいる後輩との打ち合わせを重ねながら、触媒構造の最適化やNMRやMassと呼ばれる機器を用いた分子構造の解析を進めています。最近になり、私が取り組んできた研究成果を米国化学会に論文として報告することができ、研究者として一歩を踏み出すことができました。

中村 優生さん

薬学研究科博士後期課程2年(取材時)
東京都?私立東京高等学校出身