研究コラム 2014年は世界結晶年(IYCr2014)

担当:菅原 洋子 (物性物理学講座 生体分子物性ユニット 元教授)

世界結晶年(International Year of Crystallography)とは

水晶やダイヤモンドなどの宝石も、食塩、砂糖、医薬品などの生活に密着した物質も、半導体などの先端材料も、身の回りの物質の多くの物質が結晶であることを知っていますか?結晶は、最先端の科学技術の発展や私たちの日常生活を支えています。国連総会はラウエの「結晶によるX線の回折現象の発見」によるノーベル賞受賞から100年にあたる2014年を世界結晶年と決議しました。結晶って何なの?何の役に立つの?皆さんに改めて考えてもらおうと、今年はいろいろなイベントが企画されています。

最先端科学から日常生活まで、現代生活を支えている結晶と結晶学

ギリシャ時代から、結晶という言葉は使われていたようですが、近代結晶学は、1912年にラウエが結晶によるX線の回折現象を発見し、この現象を利用して、ブラッグ親子がNaClの結晶構造解析に成功したことから始まります。日本でも、寺田寅彦が1913年にNatureに「X線と結晶」という速報(Letter)を発表しています。今日では、はやぶさが持ち帰った小惑星「イトカワ」の微粒子から、創薬とかかわる疾患関連タンパク質まで、新しい物質が見つかると、まず、その構造(物質の中の原子の配列)が結晶学を利用して決定されます。そして、その応用を目指す開発研究がスタートします。

X線や中性子線を用いて結晶内の水の役割を解明

我々は、結晶を作り、X線や加速器を使って作り出される中性子線、ミュオンなどの量子ビームを利用して、物質の構造や働きに対して、結晶の中にある水がどんな役割を果たしているかを追跡しています。水分子の運動性や量の変化が、水を内包した物質の構造やその性質(物性)の変化(相転移)を引きおこす仕組みを、X線や、中性子線、計算機シミュレーションなどを組み合わせて解明してきました。また、結晶がどのようにしてできあがっていくのか(結晶成長)その原理を明らかにする研究も進めています。

www.iycr2014.org

受験生へのメッセージ

すべての物質は原子から出来ています。物質の中で原子がどのように配置されているかが、物質の性質を決めています。数学と物理学に基礎をおく結晶学と呼ばれる方法をマスターして、物質科学から生命科学まで、結晶を通していろいろな物質の世界を覗き、その仕組みを知り、科学の発展へとつなげていきましょう。