研究コラム 光を吸収した分子はどうなるか
担当:金本 明彦,稲田 妙子 (フォトニクス講座 光分子科学ユニット 講師)
1.光とは何?
皆さん知っているとは思うのですが、光は電磁波であり、電波もX線も同じ仲間で、違っているのは波長だけです。
波長の長い方から並べてみると次のようです。
電波 → 赤外光 → 可視光 → 紫外光 → X線 → ガンマ線
2.分子による光の吸収とそれに続くプロセス
上に書いたような色々な波長の光の中で、我々は分子が特に可視光や紫外光を吸収したときにどのようなことが起こるのかを探っています。
光はエネルギーの塊です。従って、光を吸収した分子は、いつもより余分なエネルギーを持つことになるので活性化されます。そしてたとえば以下のようなことが起こります。
a. 蛍光の発光:ブラックライト(紫外線)で照らされて、幻想的に光る物を見たことがあるでしょう。
b. 光異性化:分子がその形を変えます。いくつかのパターンがありますが、
例えば
c. 電子移動:電子を一つ出したり、逆に一つ取り込んだりします。
d. エネルギー移動:衝突によって、あるいは衝突を起こさなくても、エネルギーが近くの分子に受け渡されます。
ニワトリ卵白リゾチームのリボンダイヤグラム
3.そして何を調べているか
- bのような性質を持った分子を生体機能性分子に導入して、光によってその働きをコントロールできないか。
- テレビや携帯電話の画面には、液晶という普通の液体とは違って、その分子がほぼ同じ方向を向いてならんでいる材料があります。このような液晶材料の中でエネルギー移動(d)を起こしたら、普通の液体中と違ったことが起こるのでしょうか。
(等々)