牛の食べるえさとして牧草や飼料用トウモロコシが栽培されています。牧草は一度播種すると複数年にわたって刈り取り、天日乾燥、収穫を繰り返すのですが、牧草地に雑草が紛れ込むと牧草の収量が減ってしまいます。現在の牧草生産では、雑草が増えてくると牧草地全面に農薬を散布していますが、雑草がない部分にも農薬を散布するため多くの農薬が必要です。雑草の生えている場所だけに農薬を散布することができれば、農薬の使用量を大幅に削減することができます。また農薬を散布するかわりに雑草のみ刈り取ることにより、農薬を使用しない有機農業を実現することができます。
環境解析学研究室ではその目標を実現するため、実際に雑草が生えている位置を特定し、その雑草が地面を覆っている面積を計算する研究を行っています。雑草の位置と覆っている面積がわかれば、その雑草に向かって必要な量の農薬を散布する「スポット散布」が可能になります。また有機農業の場合は、刈り取り機を動かす範囲が明らかになります。
対象とする雑草は「エゾノギシギシ(学名Rumex obtusifolius L.)」という雑草で、一株の草から何千粒も種子を作り、その種子も休眠が浅いものから複数年に渡るものまで存在し、地面に落ちた種子が長期間出芽するため根絶するのが難しい雑草です。このエゾノギシギシの生えている位置と大きさを、距離画像カメラとGNSSを利用して計測する研究を行っています。位置と大きさがわかれば、自走式の散布ロボットによるスポット散布や、刈り取り機を装着したロボットによる雑草の刈り取りが容易になります。
具体的な計測方法を以下に示します。下の写真に示すように、台車に距離画像カメラとGNSS受信機が取り付けられています。距離画像カメラの画像から対象とするエゾノギシギシまでの、距離画像カメラの座標系での位置を計測します。またエゾノギシギシ葉の先端から反対側の先端までの距離を計測し、大きさを計算します。現段階では、コンピュータの画面上に表示される画像を、人がマウスでカーソルを移動させてクリックすることでエゾノギシギシの中心位置や葉の先端位置を指定します。距離画像カメラ、GNSS受信機とも台車に固定されているので、GNSS受信機から出力される緯度経度の値をもとに、エゾノギシギシの生えている位置の緯度、経度を計算します。
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現段階では、大きさの精度は物差しで計測する場合と比較して9%の精度で、位置の精度は15 cmの精度で計測することが可能です。今後は精度を向上させる研究とともに、将来的には移動型ロボットに搭載した画像の自動記録及び記録した画像のコンピュータによる画像処理により、エゾノギシギシの中心位置や葉の先端位置を指定して自動で位置と大きさを検出できるようにすることを計画しています。
この研究はSDGsのターゲットの、2.4のうち、「持続可能な食料生産システムを確保」すること、12.4のうち「化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減」することに貢献します。
このほかトウモロコシの生産においても、このステレオデプスカメラを利用して生育調査を行う研究を行っています。
この研究は、公益財団法人青森学術文化振興財団の助成を受けて行われています。詳細については下のリンクをご覧ください。
https://researchmap.jp/yoshisada_nagasaka/published_works(3月下旬公開)