漢方薬の特徴と健康増進への役割

現代医療において漢方薬は、西洋医学的な治療が困難な疾患への対処や西洋医学の補完的な医療に対し大きな役割を果たしている。西洋薬（新薬）は単一化合物が特異的な標的に作用することにより効果を現すことが多いことに比べ、漢方薬は配合された生薬に由来する複数の成分が含まれており、これらが複数の標的に作用することにより、全身の複雑な病態を改善すると考えられている。漢方薬がどのようなメカニズムで作用し、どのような成分がこれに関わっているかのエビデンスを明らかにすることは、漢方薬の健康増進への役割をより明確にするために重要である。最近の基礎研究により、漢方薬のインフルエンザウイルスに対する作用や、術後の腸閉塞防止、抗がん剤や放射線治療の副作用軽減、喘息の改善、認知症やうつ病に対する作用等やこれらのメカニズムの一端も明らかになってきた。漢方薬は予防的な効果も期待できることも特筆できる。