増殖生物学講座魚類分子内分泌学研究室
研究内容
光がおよぼす魚類の行動?生態への影響、生殖機能を司る神経基盤を探る。
私たちの研究室では魚のホルモンと光環境の関係を研究しています。魚は周囲の明るさに合わせて体の色を変えることができます。周囲が明るいときに脳で盛んに作られるホルモンがあります。このホルモンは血液にのって皮膚の色素細胞に働きかけ、体の色を明るくします。面白いことに、このホルモンは脳の中で食欲を調節する働きもします。つまり、魚の食欲は光環境によって変化する可能性があります。私たちは、水槽の色を白くしたり緑色の光を照らしたりすると、カレイの食欲が上がり成長が早くなることを発見しました。この現象は養殖産業に役立つかもしれません。魚の光環境は私たち人間のそれとは大きく異なります。水中では青や緑色の光以外はあまり届きません。水質によっても届きやすい光の波長は変化します。魚は光の波長成分が偏った環境にいるのです。魚の行動やホルモンの働きと光の波長成分との関わりを明らかにすることは、魚にとって最適な飼育環境の実現に必要です。最近では、生殖機能を司る神経基盤に関する研究も立ち上げ、性成熟や卵成熟?排卵のタイミングがどのように制御されているのかを解明しようとしています。生殖機能を含む多くの生理現象は脳ー脳下垂体で産生、分泌される神経ペプチドやホルモンによって制御されています。これらの分子が魚類の体内でどのように機能しているかの解明が進めば、養殖が困難とされている魚種の安定的な生産に役立つなど、水産増養殖の発展につながるはずです。魚の内分泌学研究を通して、効率的な魚の養殖技術の開発をすることを目指しましょう。