環境生物学講座沿岸生物学研究室
研究テーマ
1.養殖海域の環境特性の把握と安全性評価
四方を海に囲まれた日本では海域からの持続的な食料確保は必須の課題です。そこで、岩手県三陸や神奈川県葉山沿岸に展開する養殖海域や、流入河川の水環境(水温、塩分、クロロフィルa、栄養塩濃度、pH、DO、COD、TNなど)を測定してその特性を把握するとともに、養殖水質の安全性評価?維持に関する研究を進めています。2.海藻類の生活形の解明
海藻類は水温、光、塩分、栄養塩濃度、乾燥などの環境要因が複合されて形成されている生育環境に、その形態(形?大きさ)、生長、光合成特性などの生態的特性を適応させて生活をしています。そこで、海藻類の生態的特性と環境要因との関係を室内実験やフィールド観察を通して調べ、海藻類が生き残って行くための方法「生活形」を解明して行きます。そして、この研究結果を用いて養殖対象種や今後養殖化が期待される未利用海藻類に対する効率的で安定した養殖技術の開発を目指します。![ワカメの養殖試験](/mb/albums/577/abm00004149.jpg)
3.海藻類の優良株のスクリーニングと凍結保存によるカルチャーコレクションの確立
養殖種や未利用海藻類を対象として、天然および養殖海域から優良藻体(生長が早い、耐病性が高いなどの生態的特性を持った藻体)をスクリーニング(探索)し、保存株を形成します。そして、液体窒素中の適切な凍結保存条件を室内実験で明らかにし、有用海藻類のカルチャーコレクションを確立します。さらに、コレクションされた海藻類の海域への展開(養殖)を目指します。![沿岸生物学研究室_研究テーマ2](/mb/albums/577/abm00003818.jpg)
4.大型藻類の系統分類学的研究
海藻類は沿岸の生態系を構成する最も重要な要素の一つですが、その多様性や進化には未知の部分が多くあります。日本周辺の沿岸は世界で最も海藻類の種多様性が高い地域ですが、未だに毎年複数の新種が報告されています。本研究室では、日本各地での採集やDNA塩基配列情報を用いた遺伝的解析、顕微鏡を用いた形態観察、室内培養による生活史の解析などの手法により、海藻類を含む大型藻類の多様性や進化の解明を目指します。5.大型藻類の生物地理学的研究
海藻類が分布を広げる際には、海流に大きな影響を受けると考えられますが、種それぞれの分散能力(遊走細胞の遊泳能力や浮き袋の有無など)や着生する基質(岩、他の海藻類、人工物など)によっても、地理的遺伝構造が変わってくると考えられています。海藻類の分布がどのように成立したのかを明らかにしようとしている他、近年問題になっている外来種(移入種)についても生物地理学的なアプローチから取り組んでいます。![ハフ?ロタイフ?分布図_アナアオサ&セイヨウハハ?ノリ](/mb/albums/577/abm00010477.png)
6.大型藻類の保全に関する研究
陸上の植物に限らず、水圏の植物においても、人間活動や環境変動等により絶滅の危機に瀕している種は少なくありません。海藻類で唯一国の天然記念物に指定されているクロキヅタ、オキチモズクをはじめとした淡水紅藻類、阿寒湖に生育することで広く知られる淡水緑藻マリモなどについて、遺伝的な側面からその個体群維持の仕組みを探り、保全に役立てようとしています。研究対象生物
設備
![沿岸生物学研究室_研究テーマ11](/mb/albums/577/abm00003820.jpg)
![沿岸生物学研究室_研究テーマ12](/mb/albums/577/abm00003821.jpg)
![沿岸生物学研究室_研究テーマ13](/mb/albums/577/abm00003822.jpg)
クリーンベンチ:当研究室では主に培養藻類の株分けの際に利用しています
恒温室:研究室内にあり、ここに大型水槽を置いて実験生物を長期飼育しています
![沿岸生物学研究室_研究テーマ16](/mb/albums/577/abm00003825.jpg)
ニスキン採水器:メッセンジャーを用いて目的の水深の水を採水します
ドレッジ:船で曳網して底生生物を海底の砂泥ごと採集します
研究風景(フィールドワーク)
![研究風景(フィールドワーク)_1](/mb/albums/577/abm00003833.jpg)
![研究風景(フィールドワーク)_2](/mb/albums/577/abm00003834.jpg)
![他大学の練習船の調査航海に参加](/mb/albums/577/abm00004763.jpg)
![研究風景(フィールドワーク)_8](/mb/albums/577/abm00004838.jpg)
![研究風景(フィールドワーク)_9](/mb/albums/577/abm00003840.jpg)