医薬品化学教室

医薬品化学教室

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環境にやさしい、医薬品の化学的合成法の開発をめざして

物質を安全に効率的に化学合成する技術は、現代の医薬品開発に欠かせない技術。私たちは有機金属錯体や有機分子を利用した人工酵素である「分子触媒」の開発で、従来は難しかった物質や医薬品をより簡単な方法で合成し、大量供給を目指します。しかもこれは省資源?省エネルギーな環境調和型の合成技術なのです。

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有機化学に興味を持ち、熱意ある大学院生を広く歓迎しております。

研究内容

研究内容

研究テーマ 医薬品化学教室では,医薬品の開発において求められる有機合成化学的な基盤技術の開発研究を行って います。具体的には次の1~4に関する研究に取り組んでいます。
1. 遷移金属錯体や典型元素を用いた新反応や触媒反応の開発
2.生体分子の合成法の開発
3.糖鎖認識分子の開発
4.生物活性物質の合成

1. 遷移金属錯体や典型元素を用いた新反応や触媒反応の開発:山本

「有機金属錯体を用いたジヒドロイソオキサゾールの合成法の開発」 ジヒドロイソオキサゾールを含む化合物のなかには,有用な生物活性を示すものが数多く存在します。 例えば,抗がん活性を示すものや,抗ウイルス活性や抗原虫活性示すもの,Na+,K+-ATPase 阻害活性を示 すものなどがあります。 したがって,それぞれの化合物に関して構造活性相関を行ったり,大量に物質供給するためには,ジヒ ドロイソオキサゾール環を効率的に化学合成する方法論の開発が必要とされています。

通常,ジヒドロオキサゾール環はニトリルオキシドとアルケンとの 1,3-双極子環化付加反応により合 成されます。ニトリルオキシドは一般的に化学的に不安定であるために,アルドキシムの酸化反応やア ルドキシムをハロゲン化したのちにトリエチルアミンなどの塩基で処理し反応系中で生成させて用いる 方法がよく行われます。しかしながら,ニトリルオキシドは二量化やポリメリ化反応といった副反応を 起こしやすいことが,収率を低下させる一つの問題となります。また,ニトリルオキシドの生成のために は酸化剤や塩基などが必要となるうえに,それに伴なって廃棄物が副生することもグリーンケミストリ ー(環境調和型化学)の観点から問題となります。

私たちの研究室は,以上のような問題点を克服した新たなジヒドロオキサゾール環の構築法の開発に成 功しました。すなわち,化学的に安定なγ,δ-不飽和オキシムを原料に遷移金属錯体を 1000 分の 1 という ごくわずかな量を作用させるだけで,空気中の酸素分子を反応基質内に取り込みながら,ジヒドロオキ サゾール環を構築する方法です。この反応は,すべての操作が空気中で行えることや,コストのかからな い空気中の酸素を反応剤として用いることができるなど,数多くの優れた点が挙げられます。

このような私たちの開発技術をもとに,20種類以上のジヒドロオキサゾール環をもつ化合物の合成を行うことが可能となったとともに,米国南部や中南米で問題となっているシャーガス病(アメリカトリパノソーマ病)に対して有効な化合物の合成にも成功しています。 また,ジヒドロオキサゾールは,β-ヒドロキシケトン(アルドール等価体)やβ-アミノアルコールへの変換が可能なことから,有用な合成シントンとしても活用可能です。

私たちの開発したジヒドロオキサゾール環の構築法に関しては,「4,5-ジヒドロイソオキサゾールの製造方法」という特許を出願したとともに,英文誌への論文を投稿中です。 この研究の成功を支える核となる技術は「遷移金属錯体による触媒反応」の開発にあります。わずか 1000 分の 1 という極微量な遷移金属錯体が,空気中のおよそ 5 分の 1 しか存在しない酸素を補足し反応 基質にとり込むことは,私たちの当初の想像をはるかに凌駕する発見でした。また,触媒量が超微量にも かかわらず,空気中の水や二酸化炭素,あるいは溶媒中に存在する不純物が,触媒活性を低下させない (触媒毒とならない)ことも驚くべきことです。また,加熱や冷却,加圧といった反応条件を必要とせず, 室温で反応が進行することも,グリーンケミストリーの観点から優れています。 現在,研究は不斉配位子をもつキラルな遷移金属錯体の開発に進んでおり,空気中の酸素を利用した 「触媒的不斉反応」の実現を目指して精力的に研究を展開しています。 その他にも,私たちの研究室では,ケイ素やホウ素,硫黄元素などの典型元素を含んだ新たな機能をも つ分子触媒の開発研究に取り組んでいます。

2.生体分子の合成法の開発

生命には 3 本の鎖が存在します。一つは DNA や RNA の核酸を構成するリン酸エステル結合からなる 鎖,もう一つは酵素や受容体,抗体などに代表されるタンパク質を構成するペプチド結合による鎖, 最 後は糖と糖を結ぶグリコシル結合からなる鎖です。リン酸エステル結合からなる鎖は遺伝子として生命 の情報の保存する分子といえます。ペプチド結合からなるタンパク質は,生命を維持する上で必要な化 学反応を促進する触媒としての機能をもちます。グリコシル結合からなる糖鎖については,細胞膜表層 に存在し,細胞に外部からの情報を伝えるアンテナ分子として機能します。

3.糖鎖認識分子の開発

4.生物活性物質の合成