創薬物理化学教室

創薬物理化学教室

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田中信忠 教授

X線とコンピュータを相補的に活用し、薬の種になる分子を論理的に設計する。

大多数の薬の相互作用相手であるタンパク質の立体構造を知ることは、薬の形や性質のデザインに必須です。我々は、薬の標的となるタンパク質の立体構造をX線結晶構造解析という実験で決定し、その情報をコンピュータシミュレーションに活用して薬の種になる分子を論理的に設計することで、医薬品開発の効率化を目指します。

研究内容

Structure-Based Drug Designの概念

創薬物理化学教室における研究の流れ

タンパク質のX線結晶構造解析の流れ

インシリコ?フラグメントマッピング法によるキマーゼ阻害剤のバーチャルスクリーニング

 キマーゼは肥満細胞に存在するセリンプロテアーゼであり、循環器系疾患や炎症性疾患の標的として注目されている。本研究では、キマーゼ阻害剤のリード化合物となりうる新規化合物を同定することを目的として、当研究室で開発したインシリコ?フラグメントマッピング法によるキマーゼ結合フラグメントの探索、および同定したフラグメントの結合様式に基づくバーチャルスクリーニングを実施した。
 はじめに、キマーゼのリガンド結合部位周辺に対してインシリコ?フラグメントマッピングを行った。得られたフラグメントのキマーゼ結合様式に基づいて3次元ファーマコフォアモデルを構築し、それを満たす化合物を市販化合物データベースから抽出した。次に、キマーゼ結晶構造に対するアンサンブルドッキング計算や結合親和性解析(MM-GBSA計算)を行い、候補化合物を絞り込んだ。酵素アッセイの結果、8個の候補化合物のうち1化合物において濃度依存的なキマーゼ活性の阻害が観測された。

分子重ね合わせによるκ-オピオイドアゴニストの3次元ファーマコフォア同定

In silicoスクリーニングや分子動力学的(MD)シミュレーションを用いた新規薬物のリード化合物の同定

 

グルコセレブロシダーゼ高親和性結合リガンドであるカリステギンB2に対する計算化学的相互作用解析

ゴーシェ病とは、グルコセレブロシダーゼのアミノ酸が遺伝的に変異し、構造が不安定になることで活性が低下して基質であるグルコシルセラミドが蓄積してしまう疾患である(反応式:下図)。

グルコセレブロシダーゼに結合するカリステギンB2に、酵素の構造安定化や変異体の活性を回復する作用があることが報告された。

そこで、計算機手法を用いてグルコセレブロシダーゼとカリステギンB2のドッキング解析を行い、相互作用について解析した。

右の図が解析の結果推定されたドッキング構造と相互作用図である。

 

量子化学計算と多変量解析の組合せによる新規3次元定量的構造活性相関解析手法の開発?応用

水和サイト解析を用いた共結晶リガンドの結合の特性解析および新規リード化合物候補のバーチャルスクリーニング