薬用植物園

薬用植物園

English


MEDICINAL  PLANT  GARDEN
KITASATO  UNIVERSITY

研究内容

研究分野の概要

薬用植物は生薬や医薬品のみならず、麻薬原料からサプリメントまで幅広く使用されていますが、その一方で資源の枯渇も心配されています。このような薬用植物のさらなる利用と安定的な供給を図るため、基原植物の化学成分による品質評価の他、植物形態学と遺伝子解析の面から再検討し、生育習性を明らかにすることで栽培化、国産化に寄与しうる研究を行っています。

トウキ(当帰)とセネガ

薬用植物の種子における発芽条件の解明

トウキの根は生薬トウキ(当帰)として、四物湯、当帰芍薬散などの漢方処方に、ヒロハセネガの根は生薬セネガで、去痰薬としてセネガシロップ原料などに用いられます。トウキやヒロハセネガなどの種子内の充実度を推定し、発芽に及ぼす温度や光との関係性を明らかにすることで、発芽率や発芽勢がよい優良な種子を選別、休眠や胚の発達状態を見極める技術の確立を目指しています。このことにより、初期の育苗時における作業性の効率化を実現することができ、生薬の国産化及び品質向上や農業生産者の労力軽減に寄与できると考えられます。

バクモンドウ(麦門冬)

バクモンドウ(麦門冬)の基原植物ジャノヒゲの根の肥大メカニズムの解明

ジャノヒゲの根の膨大部は生薬バクモンドウ(麦門冬)として、麦門冬湯などの漢方処方に用いられます。系統選抜されたジャノヒゲを用いて、栽培時における気温、土壌、灌水、施肥など栽培条件をつぶさに検討することで、これまで未解明であった本種の根の肥大メカニズムを明らかにし、生薬「麦門冬」の国内生産に寄与しうる栽培法の確立を目指しています。

シコン(紫根)

シコン(紫根)の基原植物ムラサキにおける収量と成分含量を向上させる栽培法の解明

ムラサキの根は、生薬シコン(紫根)として紫雲膏などの漢方薬の原料として用いられるだけでなく、古来より紫色の天然色素としても用いられてきました。乱獲や生育環境の悪化により、環境省の絶滅危惧種(絶滅危惧IB類)に指定されています。現在、文化庁補助事業の一環として(財)日本民族工芸技術保存協会とともに紫根中のシコニン誘導体の含量と収量をともに向上させる栽培法の解明に取り組んでいます。
 

キクカ(菊花)

キクカ(菊花)の基原植物シマカンギクの系統保存と品質評価

シマカンギクの頭花は生薬キクカ(菊花)として杞菊地黄丸などの漢方処方に用いられます。シマカンギクの野生種を系統ごとに生息域外保全するとともに、それらの形態学的特徴、生育習性の差異を詳細に調査し、ルテオリンやアピゲニンといったフラボノイド類を指標とした品質評価を行うことで、地域ごとの栽培に適した系統の選抜や生育部位の収穫に向けてより効率的な栽培法の開発に取り組んでいます。

エイジツ(営実)

ノイバラにおけるmultiflorin Aに関するケモタイプの遺伝子型解析

ノイバラの偽果または真果が生薬エイジツ(営実)で、瀉下薬として用いられます。エイジツの瀉下活性はフラボノイド配糖体のmultiflorin Aなどによるものと考えられますが、中国産、韓国産などのエイジツにはmultiflorin Aを含まないもの(ケモタイプ)があることがわかっています。品質評価の観点から、それらのケモタイプを遺伝子型で識別することを目的として、ノイバラの遺伝子型解析を行っています。