臨床薬学研究部門

臨床薬学研究部門

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基礎研究の成果を臨床薬学に活かす。

トランスレーショナルリサーチの実践を目指す。

活性酸素は、糖尿病をはじめとした生活習慣病の発症や悪化、あるいは有毒物質の毒性発現の要因となることが知られています。この部門では、様々な病気の発症機構や有毒物質の毒性発現における活性酸素の役割を解明し、基礎研究での成果を新たな薬物治療法の開発などへ発展させる研究を目指しています。

研究内容

配属を希望される学生さんへ

臨床薬学研究部門は、2020年に新設されて、2021年度より動き出した新しい研究室です!
スタッフとともに研究テーマを進めて、これからの研究室の方向性を作っていってくれる学生さん、是非一緒に頑張っていきましょう!
興味がある方は遠慮なく研究室まで連絡ください。

臨床薬学研究部門について

当研究室では、基礎研究の成果を臨床薬学に活かすトランスレーショナルリサーチの実践をモットーに研究を進めています! 

研究内容




臨床薬学研究部門では、様々な病気の発症機構や有毒物質の毒性発現における活性酸素の役割を解明し、基礎研究での成果を新たな薬物治療法の開発などへ発展させる研究を目指しています。
 

 

 


 私たちにとって酸素は、生存する上で最も大切な生物エネルギーであるATPを生産するために必要不可欠な物質です。しかし、その過程で一部は反応性の高い中間代謝物となります。これらの中間代謝物は極めて反応性に富んでいるため「活性化された酸素」の総称として 活性酸素種(Reactive Oxygen Species : ROS)と呼ばれています。ROSとは狭義の意味ではスーパーオキシドラジカル、過酸化水素、ヒドロキシラジカルおよび一重項酸素を指し、広義には一酸化窒素や、ペルオキシラジカル 、次亜塩素酸などが含まれます。これらのROSは、 紫外線による酸素分子の分解反応によっても生じるほか、リポキシゲナーゼやNADPHオキシダーゼなどの酸化酵素などにより酵素的に生成されます。生成されたROSは、生体成分であるタンパク質や脂質、核酸を酸化修飾しその機能を不活化することが知られています。したがってROSや酸化酵素のような 酸化活性を持つ物質を、まとめて生体における酸化力と考えることができます。

 一方で私たちは、この酸化力に対抗するために様々な抗酸化物質を持つことで抗酸化力を高めています。代表的なものがカタラーゼやグルタチオンペルオキシダーゼなど、ROSを消去できる抗酸化酵素です。またセレノプロテインPやグルタチオンなど、ROSと直接反応して消去するタンパク質?ペプチド、 トランスフェリンのように金属と結合することでフェントン反応によるROSの生成を抑制する分子も抗酸化タンパク質です。さらに食事から摂取されるビタミンCやビタミンEなどの抗酸化活性を持つビタミンや、カロテノイド、ポリフェノールなどの成分も生体における重要な抗酸化物質です。 

 通常、体内では酸化力と抗酸化力のバランスがうまくとられていますが、何らかの要因でこのバランスが壊れてどちらかに傾くと生体内に異常が生じます。特に酸化力が抗酸化力を上まわった状況を「酸化ストレス」と言います。強い酸化ストレスが持続的に続くと、酸化修飾された異常タンパク質や脂質、 核酸を除去できなくなって、細胞機能の障害により細胞死が引き起こされます。さらに大規模な細胞死の誘導は構成する組織の障害を引き起こし最終的に病気へと繋がります。酸化ストレスは、アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患、動脈硬化症や脳梗塞、心筋梗塞などの循環器病、腎疾患、糖尿病など 多くの疾患の要因になってことが明らかになってきていますが、発症における作用の詳細についてはまだまだ不明な部分が多く、個々の疾患における酸化ストレスの作用機序の解明が期待されています。

<現在、研究室で進めている研究>
?ヘビ毒成分LAAOによる酸化脂質依存的細胞死の誘導機構に関する研究

 人類は有史以来、毒ヘビによる咬傷被害に悩まされてきました。それにも関わらず毒ヘビ咬傷に対する有効な治療法は、今以て唯一抗毒素血清の投与のみであり、抗毒素血清治療も価格、利便性、副作用の問題や、抗血清の効果が毒ヘビの種類に左右されることから、特にアフリカやアジアの貧困地域では受傷者にとって十分に有効な治療法とは言えないのが現状です。そこで問題の解決のために、現状の抗毒素血清にとって替わる、毒ヘビの種類に依らない、より安価で携行しやすい治療薬の開発が求められています。そこで私たちは創薬の標的として、多くの毒ヘビの毒性成分に共通に含まれている分子であるL-アミノ酸酸化酵素(LAAO)に着目しました。LAAOは遊離アミノ酸を補因子FADの存在化で酸化して、対応するケト酸とアンモニアと過酸化水素(H202)を生成する酵素です。  

 このテーマでは、LAAOが酸化ストレス依存的に細胞死や組織障害を引き起こすことを実証し、その発現機構及び毒ヘビ咬傷における障害度への寄与の重要性を明らかにして、LAAO阻害剤が毒ヘビ咬傷の新たな治療薬となる可能性を検討することを目的としています。
 

?医薬品による横紋筋融解症発症機序の研究

 横紋筋融解症は、種々の原因により横紋筋細胞膜が崩壊し、壊死することで筋原性酵素などの筋内容成分が循環血中に逸脱して筋肉の痛みや脱力などを生じる病態です。また流出したミオグロビンにより尿細管が障害を受けることで急性腎不全を生じたり、多臓器不全を併発して生命に危険を及ぼすこともあります。

 様々な医薬品で副作用として横紋筋融解症をきたすことが報告されています。代表的な医薬品として、スタチンを中心とする高脂血症治療薬があります。その他、ニューキノロン系の抗生物質や向精神薬などで報告されています。どうやってこれらの医薬品が横紋筋融解症を引き起こすのかについてはまだまだ詳細な機構がわかっていないのが現状です。そこで、筋細胞に対する障害の機構を明らかにして、より適切な医薬品の使用につなげることを目的に研究を行なっています。