SDGs

Vol. 6 ミニブタの異分野融合トランスレーショナルリサーチで人と動物に健康と福祉を!

獣医病理学 川口博明

日本人の病気による死因は第1位が悪性腫瘍、第2位が心筋梗塞、第3位が脳梗塞です。第2位と第3位の梗塞疾患による死亡数を合わせると第1位の悪性腫瘍に匹敵する数となり、この梗塞疾患の克服は社会的急務です。

この梗塞疾患は動脈硬化が主因であり、世界では動脈硬化に対する様々な研究が行われています。私達は、人との解剖学的?生理学的類似点が多いブタに着目し(写真1)、ヒト型動脈硬化モデルミニブタを用いて異分野融合トランスレーショナルリサーチを展開しています。トランスレーショナルリサーチとは基礎研究成果(シーズや病理発生機序)をもとに、新しい医療技術?医薬品を実用化させる「橋渡し研究」のことをいいます。

世界最小の超小型ミニブタであるマイクロミニピッグを用いた「ヒト型動脈硬化モデルマイクロミニピッグ」では、人の動脈硬化の危険因子である高脂肪食の給餌のみで、高脂血症(高コレステロール血症)を誘発し(写真2)、その高脂血症がある一定期間持続することにより石灰沈着や線維化(Fibrous cap)などの病理組織学的病変を伴う人の病態に類似した動脈硬化病変(写真3)が発生します。その脂質代謝も人に類似しています(表1)。この動脈硬化モデルを用いて、獣医学?医学?農学連携のもと機能性食品(ラクトフェリン)の動脈硬化に対する新たな機能(シーズ)を見出すことにも成功しています(Biosci Biotechnol Biochem. 80:295-303, 2016)。

私達は、この動脈硬化モデルミニブタの基礎研究(病理発生機序)や応用研究(治療法)を重ねつつ、さらに新たな概念として動脈硬化を増悪させる化学物質の研究(毒性病理学)、特に腫瘍循環器学ONCO-CARDIOLOGYの獣医学?医学連携研究に注力し、がん患者の生命予後の延伸とQOL改善への貢献も目指していきます。

また、私達はミニブタの研究を通じて、マウスではできないHuman equivalent dose(HED、ヒト等価用量)を求めるための「前臨床HEDモデルミニブタ」開発への手応えを感じています。ミニブタ研究で求めた新しい化合物の有効投与量をHEDに外挿することで、その結果、他の動物種の実験利用を減少させ、アニマルウェルフェアにも貢献していきます。

今年、博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@獣医学部に獣医大内設置として国内初となる寄付講座「ミニブタ研究推進寄附講座」が開設されました(2022~2024年の3年間)。当講座では、異分野との連携を図りながらミニブタ研究を推進すると同時に、ミニブタ?トランスレーショナルリサーチに卓越した人材(研究者、獣医師)の育成も担っていきます。

私達博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@獣医学部獣医病理学研究室およびミニブタ研究推進寄附講座は、ミニブタの異分野融合トランスレーショナルリサーチを通してSDGsの達成に貢献していきます。

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