オリーブオイルはヨーロッパの地中海周辺でよく消費されている油脂の一つであり、近年では国内でも広く普及しています。このオリーブオイルは肥満や心?血管系の疾患との関連はよく研究されてきましたが、骨格筋に対する影響はあまりわかっていませんでした。そこで、本研究ではオリーブオイルがマウスの運動パフォーマンスおよび骨格筋特性に及ぼす影響を調べました。
オリーブオイルを7%配合した飼料(対照群は大豆油)を8週間マウスに給餌しました。その結果、オリーブオイル摂取はランニング持久力を向上させ、その向上が筋内エネルギー基質である筋内脂肪の蓄積量増加に起因することを見出しました。筋内脂肪は異所性脂肪の一種であり、運動トレーニング等による蓄積は良質とされる一方(アスリートパラドックス)、肥満等による蓄積は代謝障害を引き起こすことが知られています。筋内脂肪の蓄積形態を調べた結果、悪性脂質であるジアシルグリセロールは検出されず、トリアシルグリセロール(TAG)の増加が確認されました。また、その増加がTAG合成酵素であるDGAT1の発現量変化によるものであることも見出しました(運動トレーニングによる筋内脂肪増加もDGAT1を介している)。
本研究の解明により、日常的に摂取する油脂の種類によって骨格筋特性を変化させることができ、それにより運動パフォーマンスの向上に繋がることが明らかになりました。今後は、運動中の利用エネルギー基質の変遷や筋内脂肪の増加の生理学的意義を追求していくことで、「運動模倣食品」として、運動トレーニングによって得ることができる効果を代替する保健機能食品の開発を目指していきたいです。
※ただし、あくまで油ですので摂りすぎには注意しましょう。