「卒業研究を終えて―ツキノワグマの保全は先ず歯から―」動物生態学系研究室 白井里奈
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ツキノワグマは、雑食性で主に植物質のものを好む大型の哺乳類です。ツキノワグマによる被害は農林業被害、人身被害、精神的被害があります。特に農作物被害金額は全国で約4億円、青森県では500~2,000万円となっています。これらの被害の要因として、中山間地域の過疎化や高齢化が進行し、耕作放棄地が増加したことや、狩猟者の減少と高齢化に伴い、狩猟圧が低下したことが挙げられます。一方で、ツキノワグマは生態系の維持や物質循環のうえで重要な役割を担うことから、保全も必要です。
このようなことから被害の軽減を目的とした個体群の管理と、個体数の減少や絶滅が懸念される地域の保護は重要であるといえます。ツキノワグマの保全には、地域個体群の把握が必要であり、まずは個体群把握のために必要な年齢について着目しました。研究内容は、十和田市内で有害駆除されたツキノワグマの年齢査定と捕獲調書の検討です。現在、ツキノワグマの年齢は、狩猟者の経験と勘を元に年齢を推定していますが、実年齢は明確になっていません。そこで、歯を用いて実年齢を査定し、推定年齢と実年齢の比較を行いました。歯を用いた年齢査定は、年輪法といい歯根の外側にあるセメント質に現れる年輪を数える方法です。歯のセメント質は毎年厚くなり、冬に成長が遅くなることで木の年輪のような構造がみられます。この年輪法を用いツキノワグマの年齢査定を行いました。
推定年齢と実年齢の比較より、狩猟者は狩猟個体の体格を基に年齢を推定しており、5歳未満の個体は、概ね狩猟者の推定が合っていましたが、5歳以降の個体では年齢差が生じていました。狩猟者は成熟した個体の年齢を若く推定する傾向がみられました。
このことから、狩猟者の年齢推定だけで地域個体群の動向をみていくためには、不十分であり、特に成熟した個体において、年齢査定を行っていく必要があります。
今回卒業研究を通して、博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@で目にしていたツキノワグマが、危険な動物なだけでなく自然環境にとって重要な存在だと学び、イメージが変わりました。また、里山の動物と人間との関わりについて考える良い機会となり、さらに観察やデータの検討を行うことで物事を客観的に判断し、分析力、思考力をスキルアップさせることができました。社会に出てからも、研究室で培った経験や協調性を生かしていきたいと思います。
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