卒業研究を終えて―調査すればするほど恐ろしい。夏の山岳、八甲田山!―【生物環境科学科】

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卒業研究を終えて―調査すればするほど恐ろしい。夏の山岳、八甲田山!―  環境情報学系 松岡祐樹

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私は、青森県の中央に位置する八甲田連峰(八甲田山)にある湿原の植生と乾燥化の関係をテーマに卒業研究に取り組みました。湿原の特殊な土壌環境と植生環境の多様性を把握するため、環境省の許可を得て植生調査や表層土壌のサンプリング調査を多地点で行いました。採取した試料は前処理にかけたのちに、強熱減量法により含有する有機物量を測定しました。また、測定結果と、植生の空間的分布との関係性をデータマイニングにより分析しました。

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八甲田山というと、冬の山岳地帯の厳しさが描かれた小説「八甲田山死の彷徨」や、映画「八甲田山」を思い浮かべる方も多いと思います。私たちは夏~秋に調査を行いましたが、それでも自然の厳しさは想像を絶するものでした。標高600メートルほどの高所でありながら十和田市内よりも気温が高い炎天下の日が多くあり、日の出とともに涼しい早朝から作業を行っていました。また、多人数で調査を進めるにあたり、担当者による精度の差やミスがなくなるように、事前に標準作業手順書を作成するなど、調査前の準備や計画に多くの時間を費やす必要があり、これも大変に感じました。

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また調査には、想定外がつきものです。対象地内の環境は局所性?多様性が高く、場所が少し離れれば、全く違うデータが集まります。そのため、調査を進めてみると、最初に想定したよりも調査日数は2倍に増え、分析対象とする試料の数は3倍以上に多くなってしまいました。大学に戻ってからも乾燥試料の粉砕などの前処理工程が多くあったため、調査すればするほど作業工数が数倍に膨らみ、それにより、さらに厳しい時間との闘いとなりました。卒論発表会に間に合うのだろうかという不安に苛まれながらも、各工程で、時間内に目標を終えられた時は、チームメイトとともに大きな達成感を得ることができました。

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卒業研究を通じて、多くのことを学びましたが、時間や資源の制約がある中でとくに事前準備や計画立案、時間管理、忍耐力などは身をもって重要性を理解することができました。これは今後社会人としても役立つのではないかと思います。

調査対象地

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植生観測用ドローン

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調査チーム