昨年に続き、オーストラリア日本野生動物保護教育財団(AJWCEF:Australia-Japan Wildlife Conservation and Education Foundation Truth)との業務委託契約により、カランビン野生動物病院での臨床研修が実現しました。今回の研修には13名の学生が参加し、渡航前には水野哲男AJWCEF理事長や現地の動物看護師による医療英語コミュニケーション研修を10回受講し、その後、8月3日にオーストラリア連邦北東部クィーンズランド州に向けて出発しました。
学生たちは、王立動物虐待防止協会(RSPCA Queensland)の見学、カランビン野生動物保護区(Currumbin Wildlife Sanctuary)、およびカランビン野生動物病院(Currumbin Wildlife Hospital)での臨床研修に参加する機会を得ました。
RSPCAQueenslandは、ブリスベンを拠点とする非営利団体で、動物福祉の推進と虐待防止を目的としています。1872年に設立されたこの組織は、動物の権利と福祉を守るため、教育活動や法律改正の提言、虐待された動物の保護、飼い主を失った動物の養子縁組など、幅広い活動を行っています。学生たちは、この訪問を通じて、RSPCAが特に力を入れている野生動物と家畜の保護活動について学びました。
1947年にAlex Griffithsによって設立されたカランビン野生動物保護区は、オーストラリア固有の野生動物の保護と自然との調和を重視する理念のもとで運営されています。1976年にクイーンズランド州の民間組織に寄付されて以降、保護区では野生動物保全のための研究、傷ついた野生動物の治療、教育活動にも力を入れています。学生たちは、特に負傷したり孤児になった野生動物のリハビリテーションや救護活動の重要性を学び、また130種類以上の動物が自然環境に近い状態で飼育されている様子を観察し、動物たちの本来の行動や生活環境について理解を深めました。
カランビン野生動物病院は、1999年にカランビン野生動物保護区内に設立され、オーストラリア固有の野生動物の救護とリハビリテーションを専門としています。年間1万羽以上の鳥類、哺乳類、爬虫類などを治療しております。学生たちは鳥類、爬虫類、両生類、単孔類、コウモリ、コアラの解剖学や生体学、栄養学、疾病治療の講義を受け、実習では、油で汚染された野鳥の除染方、交通事故で負傷した亀の甲羅修復法、内視鏡の扱い方、野鳥の羽の修復術、爬虫類の羽化、コアラの繁殖などを学びました。また、日本では経験できないコアラの病理解剖も体験し、さらに、野外調査で発信機を装着したコアラの探索や麻酔銃の実習にも参加しました。
今回の研修では現地の野生動物保護区や動物病院での実体験を通じて、日本では得られない実践的な知識とスキルを身につけることができました。特に、動物のリハビリテーションや保護活動における具体的な手法を学んだこと、そして動物福祉や環境保護の重要性について深く理解を深められたことは、大きな成果でした。また、オーストラリア市民の高い動物保護意識や、多くの施設が寄付によって支えられている現状を知ることで、動物福祉先進国としての取り組みを直接観察することができました。これらの経験は、学生たちが将来、獣医師としての道を歩むうえで、非常に貴重でかけがえのない学びの機会となりました。