代替タンパク質源として注目の食用昆虫のタンパク質栄養価に関する新知見を発表!! ~国際科学ジャーナル「Food Chemistry(IF 8.8)」に掲載~

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落合優准教授(動物資源科学科 栄養生理学研究室)と鈴木喜博講師(同 動物健康情報学研究室)らが執筆した論文がFood Chemistry誌に受理?掲載されました!

論文タイトル:Low protein digestibility-corrected amino acid score and net nitrogen-to-protein conversion factor value of edible insects

和訳タイトル:食用昆虫のタンパク消化率を加味した補正アミノ酸スコアおよび正味の窒素-タンパク質変換係数は低い

この度、動物資源科学科の栄養生理学研究室 落合優准教授と動物健康情報学研究室 鈴木喜博講師らが投稿した論文が国際誌Food Chemistry誌(IF 8.8)に受理されました。本研究論文は、2022年3月に本学科を卒業した岩田克樹さんと鈴木蓮さんが協同で実施した卒業論文研究を村山麻理香さん(2024年3月卒業)が追解析し、落合准教授と鈴木喜博講師が執筆しました。本研究成果は、2024年5月24~26日に開催される第78回日本栄養?食糧学会大会(福岡市)にて発表します(口頭発表者:村山麻理香、5月25日発表)。

本研究内容の概要
本研究で見出した食用昆虫の真のタンパク質量は、従来法で算出された値と比較して約10%低いことがわかり、NPFも著しく低いことが示された。また、食用昆虫タンパク質の生体内消化率が低く、PDCAASが低くなることも示された。

食用昆虫は世界に2,100種類以上知られ、国際農業機関FAOが2013年に食用昆虫の食料?飼料用途の利用推進に関する提案書(*1)を発表して以降、世界的に食用昆虫に関する研究が増えています。食用昆虫を人の食料や家畜の飼料に利用する利点として、環境面や経済面の利点が注目されていますが、栄養価については研究途上です。例えば、食用昆虫はしばしば、“代替タンパク質資源”であると言われますが、食用昆虫のタンパク質の量が過剰に算出され、質についてはヒトや動物の消化性を考慮されていないまま認知されつつあることが問題視されております。したがって、食用昆虫を食品や飼料として利用する上で、適切にそのタンパク質栄養価を評価することが重要です。

今回Food Chemistry誌に受理された論文では、5種類の食用昆虫粉末(TAKEO株式会社様(東京)よりご提供)のタンパク質の量について、分析上の夾雑物質である食物繊維キチンの量を考慮した上で2種類の方法で定量した結果、従来法で分析した値と比較してタンパク質の量が10%程度低くなることがわかりました。その上で、より精確なタンパク質量換算係数(*2)についても従来の数値と比較して低くなることを提示しました。また、食用昆虫のタンパク質を構成する必須アミノ酸の充足率は低く、さらにラットを用いた実験から(*3)、タンパク質は消化酵素によって消化されにくいことも明らかにしました。

本論文は、食用昆虫の食料?飼料利用を図るうえで、そのタンパク質栄養価を十分に考慮しなければならないということを主張する論文であり、将来的に食品?飼料への食用昆虫の利用が認可される時には、その栄養成分を表示する場面で重要な知見になると思われます。

論文は下記リンクより閲覧できます。

著者:Masaru Ochiai, Yoshihiro Suzuki, Ren Suzuki, Katsuki Iwata, and Marika Murayama

掲載ジャーナル:Food Chemistry(IF 8.8)

受理日:2024年5月20日

リンク:https://doi.org/10.1016/j.foodchem.2024.139781

(PDF閲覧に制限あり)

*1 FAOの公式サイト https://www.fao.org/4/i3253e/i3253e.pdf にて論文を取得可能です。

*2 一般的に、アミノ酸組成が未知な食品(昆虫などが該当)中のタンパク質は、含まれる総窒素量に規定のタンパク質量換算係数を乗じて算出されます(一般的な動物性食品の換算係数は6.25)。アミノ酸組成が既知である食品については、そのアミノ酸組成の総和からタンパク質量が算出されます。

*3 動物実験計画書を本大学の動物実験委員会に提出し、承認を得た上で実施しました。

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