分子薬理学教室
分子薬理学教室
English薬の効き方を知る薬理学の視点から生命のメカニズムを探り、創薬へ応用する
薬の作用を知る薬理学は、生命現象から創薬まで幅広く関わる興味深い分野です。その中でも私たちは網膜の血管に注目して、血管が形成されて維持されるメカニズムを研究しています。網膜血管の異常は、網膜症や緑内障など失明リスクの高い疾患と深く関わっています。新たに分かった血管維持のメカニズムから、網膜の血管が障害されて失明する事態を回避できる、新薬が開発できるかもしれません。
研究内容
網膜における神経-グリア-血管連関の成立?維持機構の解明
網膜の恒常性は、神経細胞、グリア細胞、そして血管構成細胞が情報交換 (神経-グリア-血管連関)することによって維持されています。失明リスクの高い緑内障や糖尿病網膜症では、網膜における神経-グリア-血管連関が破綻しています。そこで私たちは、これらの疾患の進行を抑制するためには神経-グリア-血管連関の正常化が大切であると考え、網膜における神経-グリア-血管連関に関する様々な研究を行っています。
網膜症の発症?進行機序の解明と治療薬の探索
糖尿病網膜症や未熟児網膜症では、網膜に生じる異常な血管新生が病態の進行に大きく関わっています。異常な網膜血管新生を抑制する薬物を開発するためには、ヒトの病態を模倣した実験モデルが重要になります。私たちは、薬物によって簡便に網膜血管異常モデルを作製する方法を研究し、それらを用いて抗血管新生薬の探索を行っています。
緑内障の発症?進行機序の解明と治療薬の探索
正常眼圧緑内障を含む緑内障により惹起される視神経細胞死には、グルタミン酸興奮毒性が関与していると考えられています。本邦では正常眼圧緑内障の患者が多数を占めるにもかかわらず、緑内障の治療には、主に眼房水産生抑制作用や排出促進作用により眼圧を低下させる薬物が用いられており、現在のところ、神経保護効果が期待される薬物はほとんどありません。そこで私たちは、グルタミン酸神経毒性を介した視神経細胞死を誘発することが知られている N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)硝子体内投与モデルを用いて、視神経細胞死のメカニズムの解明と視神経細胞保護薬の探索を行っています。
網膜色素変性症の発症?進行機序の解明と治療薬の探索
網膜色素変性症(Retinitis pigmentosa; RP)は、厚生労働省が定めた特定疾患治療研究事業対象疾患の 1 つで、進行性の視細胞網膜色素上皮細胞の変性により視覚障害、そして最終的には失明を引き起こす疾患です。現在のところ、RP による視細胞死に至る経過を遅延又は停止させる有効な治療法は存在しません。そこで私たちは、種々の RP モデル動物において見られる視細胞死の機序を解析し、新たな RP の治療薬の探索を行っています。
加齢黄斑変性の発症?進行機序の解明と治療薬の探索
加齢黄斑変性は、加齢により網膜の中心部である黄斑に障害が生じ、視野の真ん中すなわち最も見ようとするところが見えにくくなる病気です。欧米では成人の失明原因の第 1 位であり、本邦においても、近年著しく増加しており、失明原因の第 4 位となっています。私たちは、加齢黄斑変性のモデル動物において見られる色素上皮細胞や視細胞の変性機序を解析し、新たな 加齢黄斑変性治療薬の探索を行っています。