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スポーツに特化した専門医療は当整形外科の特色のひとつ。趣味で楽しむ方からトップアスリートまで、個々のケースにきめこまかに対応しています。競技への復帰はもちろん、その先を見据えた取り組みを行っています。

メディカルチェックからトレーニングまでをトータルサポート

関東高等学校アメリカンフットボール大会で決勝に臨んだ慶應義塾高校ユニコーンズ。相手チームのパスをカットし、ボールを手に猛然と走りだした選手が激しいタックルを受けて転倒します。すぐに起き上がり、こぼれたボールを追う選手。フィールドの横には、チーム関係者とともに、厳しい目で選手の様子を見守る医師の姿がありました。チームドクターを務める当院の整形外科医です。

アメフトやラグビーのように激しくぶつかり合う「コンタクトスポーツ」にはケガがつきもの。膝や股関節の損傷、肩の脱臼や腱板の断裂、手指の骨折など、きちんとケアをしないと競技に復帰できないばかりか、日常生活にも支障が生じるおそれがあります。

当院では、アメフトやラグビーを中心に、複数のスポーツチーム(または個人)と専属契約を結んでいます。チームドクターとして試合に帯同するほか、シーズン前のメディカルチェックやケガ予防の指導、ケガをした場合には、手術からリハビリ、トレーニング、治療中の心のケアまで、選手が安心して試合に復帰できるよう、それぞれの専門家がタッグを組み、全面的にサポートしています。

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エビデンスにもとづく的確な指導

メディカルチェックでは、選手の健康状態と、過去の病歴やケガなどについて検査します。次に、心疾患などによる突然死を防ぐため、心電図や血液に異常がないかを内科のスポーツ専門医が入念にチェック。さらに柔軟性や体力のチェックを行い、チームや個人にフィードバックします。また、必要に応じてケガの治療やメンテナンスをして、選手たちをベストコンディションでフィールドへ送り出しています。

こうして蓄積されたデータは2011年度までに7000件を超え、分析結果からさまざまなエビデンスが明らかになってきました。

たとえば、女子バスケットボール選手に多い前十字靭帯(ACL)損傷や、アメフト?ラグビー選手に多い手指の骨折。ケガをしやすい選手の特徴や、競技特性によるケガの傾向などの統計データを、治療や安全対策に役立てています。競技の前にテーピングをしたり、ストレッチをしたりするだけで、ケガを減らせることも。小さな積み重ねですが、着実に成果が表れています。

シーズン前には、チームのスタッフや選手、保護者向けに安全対策講習会を実施。エビデンスにもとづいた的確なケガ予防の指導には定評があります。「スポ根」の時代から、「いかに安全に、ベストな状態で結果を出せるか」へ――。選手だけでなく、指導者やスタッフの意識も変化してきました。また、学会等でも積極的に発表し、確立途上である日本のスポーツ医学の発展に貢献しています。

競技復帰のその先へ

当院のスポーツクリニックには、契約チームだけでなく、一般の患者さまも多く受診されます。1986年の開設以来、様々な競技でケガや障害を負った患者さまをサポートしてきました。

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どのスポーツでも、トップアスリートでも趣味のランナーでも、基本は「元のレベルで競技に復帰できること」が目標です。ただし、同じ大学のスポーツチームでも、入部したばかりの1年生と、今季限りで引退する4年生とでは事情が異なります。さまざまな背景を考慮し、一人ひとりに合った治療法を選択しています。

なかでもアスリートに多い膝軟骨の損傷については、患者さまご本人の軟骨組織の一部を採取?培養して膝の軟骨に移植する再生医療を行っています。「骨軟骨移植」と呼ばれるこの手術は、全国でも限られた医療機関でしか受けられない高度先進医療です。

しかし、どんなに高度な手術を成功させても、競技への復帰はその後のサポートがカギを握っています。リハビリテーション科では、筋力や持久力を失わないよう早期に訓練を開始。スポーツトレーナーは競技特性に合わせたトレーニングを組み、回復をめざします。さらに、治療中の焦りや不安を軽減するため、精神科医による心のケアも欠かせません。「必ず復帰する」というモチベーションを、チーム医療で支えます。

私たちは、「いま競技に戻れれば、それでいい」とは考えません。健康で、生涯にわたってスポーツを楽しめることが最終ゴールです。スポーツを愛する人々の伴走者として、一緒に走りつづけていきたい。そのために、知識と技術の向上に努めています。

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