手首の手根管と呼ばれるトンネルで正中神経が圧迫され、指のしびれや痛み、親指の運動障害が生じます。
経験豊富な手外科専門医が患者様のライフスタイルに合わせた治療を行います。手術の場合は、日帰りで体に負担の少ない内視鏡手術を積極的に行っています。また、親指の動きの制限(母指対立障害)が強い場合には、入院手術で母指対立再建術を行う場合があります。
親指?中指あるいは薬指までのしびれや痛みが出て、次第に感覚がにぶくなります。夜中や明け方に症状が悪化することが多く、睡眠障害の原因になることもあります。
症状が進行すると、親指を動かす筋肉(母指球筋)が痩せてしまい、物を掴むことが難しくなります。
手根管症候群は圧迫により生じる神経障害(絞扼性神経障害)の中で最多です。5?10%の方が手根管症候群にかかると言われており、およそ半分くらいの方は両手になることがあります。中高年の女性に特に多いですが、家事や仕事などで手を酷使する方や妊娠中の方、糖尿病の方、透析中の方にも多いことが知られています。近年、心アミロイドーシスとの関連が指摘されています。
手根管症候群の診断には問診や身体所見がとても大切です。当院では、問診や身体所見をスコア化したCTS-6スコアを用い、さらに外来超音波検査を組み合わせることで、その場で手根管症候群の診断を行っています。また、手の別の病気が隠れていることがあるため、手首のレントゲンも撮影します。診断が難しい場合や他の病気も疑われるような場合には、電気生理学的検査(神経伝導検査や針筋電図検査)を予約します。
痛みやしびれを和らげる薬を処方します。
サポーターや弾性包帯で手首を固定することで、症状が改善することが期待できます。
手根管内にステロイド注射を行うことで、一定期間の症状改善が期待できます。
手の酷使が原因になることがあるため、手指の安静や日常生活動作の改善を行います。
しびれや痛みのために日常生活の制限が強い場合や母指対立障害が高度の場合、あるいは早期に根本的治療を希望されるような場合には、手術療法が勧められます。
手術では、横手根靱帯という手根管の屋根の部分を切開して、正中神経の圧迫を解除します(手根管開放術)。当院では一般的な手根管開放術に加えて、内視鏡を用いた低侵襲手術を行っています(鏡視下手根管開放術)。鏡視下手根管開放術では傷が小さく、術後の痛みが少ないため、日常生活に早く復帰できます。いずれも日帰り手術です。
母指対立障害が強い場合、手根管開放術を行っても改善しないことがあります。その際には他の筋肉を利用して母指対立運動を獲得する方法(母指対立再建術)があります。この手術は当院では全身麻酔で行い(入院期間は1週間程度)、1か月程度のシーネ固定を行います。