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医療人間科学群 アディクション心理学
田中 萌
自己紹介をお願いします
2019年に博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@医療衛生学部保健衛生学科に入学し、病気予防と健康維持について、多様な視点から学びました。もともと、心理学を通じて人々の健康にアプローチすることに関心があったため、大学3年次に心理のコースを選択し※、卒業後は、博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@大学院医療系研究科臨床心理学コースに進学しました。
現在は、学内外での実習を通して、実践的な知識と技術を学びながら、公認心理師および臨床心理士を目指しています。
また、私はアディクション(依存症などやめにくい行動の変容)に興味があり、学部時代から継続して、若者の飲酒問題に関する研究に取り組んでいます。
※現在は受験時に臨床心理学コースを選択する必要があります。
研究の概要について
修士論文の研究テーマは、若者が経験している飲酒問題の実態やその重さを測定するための尺度(ツール)開発です。
臨床心理学というとカウンセリングを思い浮かべる人が多いかと思います。カウンセリングに加えて、実は人の知能や心の状態の測定(アセスメント)も臨床心理学を学んだ心理職の重要な業務の一つです。そのため、世間でよく利用されている知能テストや心理テストは臨床心理学者たちによって開発されています。
若者の間では、飲み放題などの利用による一度の機会の多量飲酒によって生じる問題が多く見られ、これは、いわゆる依存症のリスク要因となっています。しかし、若い人たちは、依存症にまでは至らないことが多く、既存のスクリーニングテストでは、彼らの問題を測ることについて正確性に欠ける点があります。そのため、まずは若者の現状を把握するための尺度が必要です。
本研究では、米国で開発された尺度の日本語版を作成し、信頼性(誰が何度測定に使用しても信頼した結果を導ける尺度であること)?妥当性(測定すべき概念を測定できる尺度であること)を検討しています。
その成果を、2024年度アルコール?薬物依存関連学会合同学術総会にて発表しました。
研究の魅力について
研究には、テーマや目的に応じた多様な調査方法やデータ解析手法があり、常に新しいことを学ぶ必要があります。これは自己成長のチャンスであり、新たな知識を得ることに楽しさを感じています。
最近、依存の問題を持つ人々へのスティグマ(社会からの偏見や差別)に関する質的研究に携わる機会をいただき、初めてインタビュー調査を経験しました。インタビューを学ぶなかで、普段の心理面接との違いに難しさを感じつつも、挑戦できたことは、とても貴重な体験でした。
また、インタビュー中に「今日の話が役に立てば嬉しいです」という声を直接いただき、研究が社会に与える影響を考えるきっかけとなりました。自分の興味関心を深めていくことも大切ですが、研究結果を社会に役立てるために工夫することに、研究のやりがいや面白さがあると感じています。
研究内容と社会への貢献や関連性について
近年、若者の「アルコール離れ」が進んでいると言われていますが、依然として若者特有の飲酒問題は存在し、長期的にみると病気のリスクになり得ます。若者特有の飲酒問題を的確に測定するツールが存在しない状況のなかで、私の研究は、若者の飲酒問題の早期発見や予防に役立つと考えています。また、若者が抱える具体的な問題を明らかにすることで、効果的な対策を検討するための基盤を提供できると考えています。
さらに、依存の問題は、社会的な偏見や差別の対象となりやすく、それが支援の妨げとなることが少なくありません。そのため、スティグマに関する研究は重要であり、この研究を通じて、社会の偏見や差別を軽減することや、依存の問題に悩む人々が、より支援を求めやすくなることに貢献できると考えています。
研究における今後の課題と展望について
お酒、クスリ、ギャンブル、ゲームなどへの依存の問題の悪化の背景には、心理的および社会的要因が複雑に絡み合っています。そのため、どのような問題を抱えているかだけでなく、問題の背景にも目を向けることが重要だと思います。今後は、若者が抱える飲酒問題の現状を把握することに留まらず、リスクが高い飲酒者の心理?社会的要因についても深堀りし、理解を進めることが求められると考えています。
また、依存の問題を抱える人々が経験するスティグマと、それが助けを求める行動に与える影響を明らかにし、その知見を実践的な取り組みに活かしていくことが求められています。
大学院に進学するメリットについて
特に臨床心理学コースでは、研究だけでなく、講義や実習を通して、より実践的な学びを体験することができます。本コースは実習先が充実しているため、関心のある領域の理解を深めることはもちろんのこと、幅広く心理職の業務を学ぶ機会が得られます。
さまざまな先生方から指導を受けられるため、心理療法のアプローチにおいても異なる視点を学ぶことができ、自ら問題解決に取り組むための具体的なヒントを得られると感じています。
さらに、少人数制であるため、先生方から細やかな指導が受けられること、資格取得や就職についてのサポートも手厚く、しっかりと準備を進めることができると感じています。
大学院での学びは、課題解決力やプレゼンテーション能力、論理的思考を鍛える機会となり、これらのスキルは今後の臨床や研究場面に役立つと考えています。
進学を目指している方へのメッセージ
大学院では、学部在籍時とは異なり、限られた短い時間の中で、専門的な知識や技術を深めることが求められ、より主体的な学びが必要になります。そのため、日々の努力の成果を実感できたときの達成感は大きく、自信にもつながります。
また、学内の仲間や先生方との交流だけでなく、研究活動や学会を通して出会った先生方との意見交換も刺激となり、モチベーションを高めることができます。
大学院進学は、多くの挑戦が待っていますが、その分、自分を成長させる貴重な機会でもあると思います。
皆さんも医療系研究科で、充実した大学院生活が送れるよう願っています。