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博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@ 医療衛生学部 教授
神谷 健太郎

自己紹介をお願いします
博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@の理学療法学専攻に入学後、理学療法士の免許を取得。大学院の修士課程に進学し、博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@病院の臨床現場で臨床経験を積みながら研究データの収集を行ってきました。
専門は心疾患患者さんのリハビリテーション(心臓リハビリテーション)です。ちょうど私が大学3年生の頃に博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@病院に心臓リハビリテーション部門ができ、まだ全国でも普及していない分野でしたので、指導教員のすすめもあり迷いなく医療系研究科に入学しました。
大学院在学中は博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@病院だけでなく、全国有数の心臓病専門病院の理学療法部門立ち上げに非常勤職員として関わり、またデイサービスや訪問リハビリテーションサービスにも非常勤で携わるなど、さまざまな現場で経験を積みながら現在の心臓リハビリテーション分野に進んできました。
研究の概要について
最も重要な基盤となる研究は、博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@病院の心臓リハビリテーション部門で過去20年以上にわたり集積してきた臨床データを用いた研究です。
リハビリテーションの分野はまだ分かっていないことも多く、担当の療法士の経験や施設ごとのルールでリハビリテーションの内容が変わることが多くあるため、それらを一つ一つ検証していく事が重要です。このデータベースを元に行われた研究が近年多くの国際的な専門誌に掲載され、ガイドラインにおいても引用されるようになってきました。

また、心不全患者さんのリハビリテーション有効性に関する全国調査に研究班の一員として関わらせていただきました。
この研究では、国内15の多施設共同研究で、合計4,339例の心不全による入院患者を対象として、後ろ向きに5年間追跡して得られたデータの解析をしました。その結果、心臓リハビリテーションを行った心不全患者では、退院後の死亡および再入院のリスクが23%低く、全身の予備力が低下した状態であるフレイルの心不全患者においても、心臓リハビリテーションが良好な予後をもたらす可能性があることを、米国心臓協会の心不全専門誌であるCirculation Heart Failureに報告することができました。
その他にも、慶應義塾大学医学部医療政策?管理学教室、ソフトバンク株式会社と共に、スマートフォンで取得したデータからフレイルリスクを判定できるアルゴリズムの開発に向けた実証実験を開始しました。
研究の魅力について
臨床研究で一番面白いのは、やはり目の前の患者さんが発信している情報の集積によって、問題解決の糸口を探るという一連の流れが魅力だと思います。
一人一人の患者さんはもちろんさまざまな背景や症状は違いますが、臨床において躓いたときに「まだ世の中で気付いていない何か共通する重要な情報やヒントがあるのではないか?」ということから研究が始まる点に面白さを感じています。その仮説が実際に検証され、権威ある雑誌に苦労の末、はじめて受理されたときの喜びは忘れられません。

(2022年8月 バルセロナ)
研究における今後の課題と展望ついて
今後の課題としては、自分たちの目の前で起きていることしか捉えられていないという点です。臨床研究では、多くの場合、病院や施設に来てくれている方の情報しか使うことが出来ません。一方で、病院に来たくない人、来られない人、遠方の人などさまざまな状況の人たちの健康に対する課題解決につながるような研究がしたいと考えています。
その一環が上述のスマートフォンを用いた研究ですが、現在スマホの所有率はコロナ禍の影響もあり高齢者でも大きく伸びています。フレイルや生活習慣に関する情報を活用しながらよりよい解決方法を模索していきたいと考えています。
大学院に進学するメリットについて
最先端の医療機関と廊下でつながり、臨床のスタッフと協力しながら臨床と研究の経験両方を積めることです。理学療法の分野で言えば、現在は多くの大学がありますが、このような物理的な距離が近い環境は極めて稀です。また、物理的な距離だけでなく現場で働くスタッフの多くが本学の卒業生で後輩に対する教育的な関わりをしてくれることが大きな強みです。
修了したてのころは経験がなく臨床現場での新たな研究となると通常はさまざまな反対にあってうまく進まないことも多々あります。しかし、本学ではそのような経験を積んで大学院を修了した病院スタッフがたくさんいるので、その大学院生の気持ちをよく理解してくれています。新たな研究を始める際も病棟医師や看護師の方々とのコミュニケーションの仲介になってくれ、最初のステップがうまく踏み出せるようなサポートを多くしてくれます。
進学を目指している方へのメッセージ
就職をして、いち早く現場の経験を積みたいと思うことは当然のことです。
しかしながら、最初の数年を臨床研究の勉強に更に費やすことはその後の可能性を極めて大きくしてくれます。
大学教員や研究職を目指すのであれば少なくとも博士課程を修了していることが求められます。
そうでなくても、長期間にわたって従事する医療現場において自分たちの日々の行為の是非を科学的に検証する術を知って現場にいることは、その後の仕事のやりがいを見い出すことにも多いに役立つと思います。現場での伝統的なルールやしきたりに、ただ従って業務をこなすのではなく、考え?検証し、実学の精神で現場の実践に還元していく上で大学院での学びは重要な礎になることと思います。
2023年1月取材