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農医連携教育研究センター 研究ブランディング事業

40号

情報:農と環境と医療40号

2008/7/1
「農医連携論」が教養演習Bで始まる
「農医連携」に関わる講義は、平成19年4月に迎えた学生から、医学部の1年生を対象に行われる「医学原論」の一部、獣医学部の1年生を対象に行われる「獣医学入門 I」、「動物資源科学概論1」および「生物環境科学概論 I」の一部で行われている。平成20年の4月から、一般教育部の教養演習Bで新たに「農医連携論」(1単位)が開講された。医学部、獣医学部、薬学部、生命科学研究所などの教授がこの講義を分担する。その内容について紹介する。

教養演習B「農医連携論」概要
教育目標:

病気の予防、健康の増進、安全な食品、環境を保全する農業、癒しの農などのために、すなわち21世紀に生きる人びとが心身ともに幸せになるために、農医連携の科学や教育の必要性は強調されてもされすぎることはないであろう。生命科学の探求を目指す博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@の学生が、農医連携の重要性を認識することは極めて重要な事項である。

本演習は、農と医の歴史的な類似性、現代社会がもつ農と医の問題点、医学からみた農学、農学からみた医学などの基礎的な考え方を学び、環境を通した農と医に関わる現実の事象を理解し、農医連携の科学の必要性を修得することを目標とする。

教育内容:
農医連携入門、医学/農学からみた農医連携、代替医療論、代替農業論など基礎的知識の習得。鳥インフルエンザ、重金属元素、温暖化と農?環境?健康など地球的規模での具体的知識の習得。世界の農医連携の取り組み状況の解説。農医連携の将来についての討論と考察。

教育方法:
各学部および現場からの教員による講義と演習。パワーポイントなどでの講義。一連の講義に対するレポートと討論。最終回は将来の農医連携のあり方を討論し、考察する。

  1. 農医連携入門:陽 捷行
    農と医の歴史的な類似性と、現代社会がもつ農と医の問題点を指摘しながら農医連携の科学の必要性を解説し、それについて意見交換する。
  2. 医学からみた農医連携:相澤好治
    持続的な社会をめざす中で、健康的な生活を送るために、農医連携による食育、食科学の展開は極めて重要である。講師の体験談とともに農医連携の重要性を解説する。
  3. 農学からみた農医連携:陽 捷行
    健全に調和された土壌から、はじめて人間にとって健康を維持できる食料が生産される。医食同源の考え方を紹介し、農医連携の科学や教育の必要性を理解させ、食の重要性を討論させる。
  4. 東洋医学および代替医療からみた農医連携:山田陽城
    わが国の正式な医療である東洋医学について、西洋医学および最近の代替医療と比較して解説し、その農医連携の現状と必要性を説く。
  5. 代替農業論:陽 捷行
    従来の農業は、農薬や化学肥料を多用してきた。このことが、農作物や環境に悪影響を与えた。これに変わるさまざまな農業を紹介し、代替農業の必要性を説き、現場の見学をする。
  6. 環境保全型畜産論‐生産から病棟まで‐:萬田富治
    環境を保全する畜産を紹介し、この環境から生産された安全な動物性食品を、病棟で利活用するシステムを紹介する。八雲牧場での取組みを紹介する。
  7. 鳥インフルエンザ‐感染と対策‐:高井伸二
    鳥インフルエンザの動物や人間への感染が、自然環境や農業生産の現場と密接に関係していることを解説し、現場の紹介をし、その対策について考える。
  8. 鳥インフルエンザ‐ワクチン対策‐:中山哲夫
    鳥インフルエンザの人間への感染を防止する方法、さらには、ワクチン対策について、その製造方法と利用法などを解説する。
  9. 重金属‐生物地球化学的視点と土壌と農産物の汚染リスク対策‐:陽 捷行
    地殻から掘り起こされた各種重金属の量や、それら重金属の地球上での挙動などを生物地球化学的な視点から解説する。また、重金属が土壌や作物に吸収される過程の解説、その対策について紹介する。
  10. 重金属‐臨床環境医学の視点‐:坂部 貢
    重金属による健康障害は、臨床医学の領域において極めて重要な問題である。重金属と人との歴史、発症機序などについて解説する。
  11. 地球温暖化と農?環境?健康:陽 捷行
    地球の温暖化現象が、専門家の予想を遙かにこえて早まっているといわれる。温暖化により、農業は、環境は、人の健康はどうなるのであろうか。最近のデータを紹介し、その重要性を理解させ、対策を議論する。
  12. 農医連携の取り組みと将来:陽 捷行
    北米、北欧、日本など世界における農医連携の取り組みを紹介する。agromedicine, medical geologyなどの概念を解説する。また、農医連携の科学と教育をどのように築いていったらいいか、意見交換する。

到達目標:
21世紀には農医連携の科学が不可欠であるとの理解ができる。農と医の歴史的背景を理解できる。世界の農医連携の動向把握や、現場の農医連携の実態把握ができる。

成績評価の方法と基準:
レポート、試験、出席、討論への積極的参加などを勘案し、総合的に判断する。

学生へのメッセージ:
21世紀の医学分野における目標と、農学分野の課題がどのように連携できるかという問題の解決に取り組むことは、社会の要請に応えるだけでなく、生命科学の探求を目指す博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@にとって、また博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@で学ぶ者にとって極めて重要である。

参考資料:
  1. 「博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@農医連携シンポジウム」オンデマンド:博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@ホームページ
  2. 博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@農医連携学術叢書 第1号:現代社会における食?環境?健康(2006)、第2号:代替医療と代替農業の連携を求めて(2007)、第3号:鳥インフルエンザ‐農と環境と医療の視点から‐(2007)、養賢堂
  3. 農と環境と健康:陽 捷行著、清水弘文堂書房(2007)
農医連携論」の概略 1. 農医連携入門、2. 医からみた農医連携、3. 農からみた農医連携
上述した「農医連携論」の前半の講義(1~3)の概略を、文章の構成と内容は不完全だが、講師のパワーポイントをもとに紹介する。これに続く講義は、「情報:農と環境と医療」にシリーズで紹介する。

1.農医連携入門

○ 講義内容:生命科学の博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@/感染制御?チーム医療?農医連携/分離の病/農医連携論 の講義内容/農医連携の課題/農医連携の取組

○ 博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@は生命科学の総合大学で、薬学部?獣医学部?医学部?海洋生命科学部?看護学部 ?理学部?医療衛生学部?保健衛生専門学院?北里生命科学研究所?東洋医学総合研究所?臨床薬理研究所?基礎研究所?病院など数多くの部門を有している。生命科学の研究と教育を貫いている大学は、私立大学で他にない。

○ 博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@では、生命科学の教育と研究を特徴づけるため、「感染制御」と「チーム医療」と「農医連携」の推進を旗印に掲げている。

○ 現代社会には分離の病がある。それは、知と知の分離?知と行の分離?知と情の分離?過去と現代と未来の分離である。農と環境と健康の分離もこの分離の病と捉えることができる。

○ 農医連携論の内容:省略、前項の「農医連携論が教養演習Bで始まる」を参照

○ 農医連携の課題には、次の項目が考えられる:農?環境?医療の連携を求めて/代替医療と代替農業の連携を求めて/鳥インフルエンザ:農と環境と医療の視点から/重金属など:地殻‐環境‐農‐ヒト/薬草:農医連携の視点からの栽培?加工?活用/アレルギー対策:農業?森林?生態系?医療/人と動物:公衆衛生の視点から/窒素循環:農?環境?ヒトの窒素過剰問題/ヒトの健康増進:機能性食品、サプリメントなど/地球温暖化による農業と環境と健康への影響/東洋医学と環境を媒体にした農の融合/環境ホルモン:時空を超えて/食育/食の安全と予防医学/その他

○ 農医連携を推進するための取組:

  1. 学長室通信:農と環境と医療(1~39号:博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@ホームページ参照)
  2. 博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@農医連携シンポジウム(1~5回:博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@ホームページ参照、オンデマンド)
  3. 教育:農医連携論(平成19年度から獣医学部の3学科と医学部で開始、平成20年度から教養演習Bで「農医連携論」を開始)
  4. 学部横断研究プロジェクト(北里関連26研究室などの訪問、その後検討中)
  5. 国内外の動向探索と共存体制の確立(学長室通信参照、「農と環境と健康」:清水弘文堂書房、2007出版)
  6. 農医連携の教育?啓蒙?普及(学長室通信?シンポジウム?出版?八雲農場?モナの丘)
  7. 博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@農医連携学術叢書の発刊:「第1号 現代社会における食?環境?健康」「第2号 代替医療と代替農業の連携を求めて」「第3号 鳥インフルエンザ‐農と環境と医療の視点から‐」「第4号 農と環境と健康に及ぼすカドミウムとヒ素の影響:近日発刊」
  8. 農医連携の企業化推進
  9. 農医連携センター構想

○ 農と医の歴史的な類似性と、現代社会がもつ農と医の問題点を指摘しながら農医連携の科学必要性を解説し、それについて意見交換をした。

2.医学からみた農医連携

○ 博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@建学の精神:開拓?報恩?叡智と実践?不撓不屈、感染症研究?チーム医療?農医連携

○ 医学部の基本理念:人間性豊か?優れた医師の養成?学際領域を含む医学研究の推進?国際貢献の推進と地域医療への協力?予防医学の推進、 守礼敬人教育?知育/技育/食育?産/官/学/地域連携研究?生き生きした教育/職場環境?復習の励行

○ 守礼敬人教育の展開:人を敬い礼を守ることは、優れた医師の具備すべき条件。

出典:孟子「離婁章句下」の「仁者は人を愛し、礼有る者は人を敬す」より。 目標:全ての学生が自然に守礼敬人を実行し、好ましい人間関係を築くことができる。 計画?実施:○新入生に専門家によるマナー教育 ○守礼の路(廊下)設置し、挨拶励行 ○講義?実習前後に挨拶 ○周知?広報:強化月間、強化週間、ポスター募集 評価:1年毎に「守礼敬人」調査票で事業評価

○ 農医連携論の講演内容:農業の推移/国民の健康状態?健康習慣/食生活の現状と食育の必要性/食科学の重要性/工から農へ:sustainability/医と農の連携

○ 山形県大蔵村沼の台地区の冬景色:昭和42年2月。当時は若い人が東京を目指して就職して行った。残った青年はフィリピン女性と結婚している。慶應大学医学部医事振興会(学生と医師による無医地区における夏季の集団健診と冬季健康管理活動)。糞便検査を一日中行った。

○ 農業就業人口:昭和45年 15.9% (811万人) ? 平成14年 4.1% ( 262万人) 老年人口(65歳以上人口割合):全国17% ? 農村28.6% (平成12年) 主として農業に従事している農業就業者の52.9%が65歳以上(英国7.8%、独国3.9%) 戦後復興 ? 工業化 ? 食の西欧化 ? 食料輸入増加 ? 自給率は、昭和45年の6割から、平成11年には4割

○ 国民の健康状態:平均寿命、H15年 男78.4年、女85.3年 世界一/健康寿命:H15年 男72.3年、女77.7年 世界一/死亡率はS58年頃から緩やかに上昇傾向/3大死因(悪性新生物、心疾患、脳血管疾患)/死因における生活習慣病の割合:約6割/肥満の割合増加/糖尿病疑?可能性約1,620万人/自殺などメンタルヘルスの問題

○ 主要死因別にみた年齢調整死亡率の推移/糖尿病が強く疑われる人および糖尿病の可能性を否定できない人の割合:平成14年厚生労働省「患者調査」/年齢階級別にみた高血圧症の受療率:平成14年厚生労働省「患者調査」/BMIの区分による肥満、普通体重、低体重の者の割合:平成15年国民健康?栄養調査/年齢別所見数割合の変化:男?女/10年間の虚血性心疾患罹患に対する多重危険因子の相対リスク/

○ 身体的健康と7つの健康習慣(ブレスローら、1972):適正な睡眠時間(7‐8時間) 1. 喫煙しない 2. 適正体重の維持 3. 適度な飲酒 4. 定期的な運動 5. 朝食の摂取 6. 間食

○ 我が国の喫煙者率の推移:H15国民健康?栄養調査/運動習慣のある者の割合:平成15年国民健康?栄養調査/運動習慣のある者の割合:平成15年国民健康?栄養調査

○ 高木兼寛(たかきかねひろ)1849-1915:日向国(宮崎県)に生まれる。鹿児島医学校でウイリスに学ぶ。英国セント?トーマス病院医学校に留学後、東京海軍病院長。脚気の実態に衝撃。海軍軍医総監。慈恵会医科大学の創始者。「病気を診ずして病人を見よ」。吉村昭 「白い航跡」講談社文庫 1994/松田 誠「高木兼寛伝」講談社 1990

○ 脚気の発生状況:江戸時代、大流行し「江戸わずらい」と俗称、三代家光、十三代家定、十四代家茂は重症の脚気で死亡。京都では劇症脚気が流行し、短期間で死ぬので「三日坊」。明治11年(1878)海軍の総兵員数4,528人中、脚気患者1,485人(32.8%)、死亡者32人。

○ 軍艦「龍驤(りゅうじょう)」の悲劇:品川沖?ニュージーランド(2月8日)?チリー?ペルー(5月20日出港:6月末に乗組員378人中150人が脚気発病し15人死亡)?ハワイ(7月3日入港、重症者入院したが8人死亡、新たな発症はない、8月5日出港)?9月16日品川沖。

○ 欧米の海軍では脚気が見られない。長期間の航行で脚気が発生するが、港に停泊すると脚気の発生が少なくなる。脚気患者が多発する艦船や兵舎では、蛋白質摂取が少ない。食費が少ない階級ほど脚気の発生が多い。

○ 海軍の金給制時代の食費と食物の窒素?炭素比
階級 1日当たりの食費窒素対炭素
囚人  1対33
水兵 18銭 1対28
士官候補生 30銭 1対25
准士官  1対20
士官 40銭 1対20
○ 高木兼寛:海軍の航海中に発生した脚気に対して、炭水化物中心の食事が原因であると予測し、食事に麦、大豆、肉を増やして軍艦「筑波」を航行した結果、脚気の発生は激減した。脚気がビタミンB1の不足によることは解明できなかったが、疫学的手法を用いて実際に疾患を予防した。

○ 脚気の原因をめぐる論争:緒方正規「脚気病菌発見の儀」:1880年東大医学部卒業後、ミュ ンヘン大学で衛生学を学ぶ。脚気患者の血液と死亡者の臓器から細菌を発見し、細菌を動物接種して脚気同様の症状発現し、血液中に細菌を発見。石黒陸軍軍医監、森林太郎も細菌説、栄養説を批判。囚人は麦飯を食べていたので、脚気にならない。

○ 英国医学派(薩摩藩):海軍の高木兼寛は、脚気栄養説(脚気米食論)で実証主義。一方、ドイツ医学派の東大?陸軍は、脚気細菌説(北里柴三郎先生は反対、緒方正規教授と論争)。

○ 日清?日露戦争中の脚気発生:日清戦争中で海軍での脚気罹患者34人、死亡者1人/3,096人(出動人員)。陸軍では脚気罹患者34,783人、死亡者数3,944人(戦死者数977人)。日露戦争では海軍での脚気重症者はなし。陸軍で出動した総人員は110万人、脚気患者は211,600人、脚気による死亡者27,800人(戦死者47,000人)。明治41年、脚気病調査会の会長は森林太郎、北里柴三郎は臨時委員。

○ エピローグ、高木兼寛:明治43年、鈴木梅太郎が米糠中の鉄蛋白質が脚気治療に効果、新栄養分をオリザニンと命名、ポーランドのフンクがビタミンと命名。高木兼寛67歳、次女死亡。71歳、三男37歳で神経衰弱により死亡。次男腸チフスで死亡。4男2女のうち長男のみ生存。大正4年、72歳、多量の蛋白尿、死亡。大正5年、陸軍軍医総監、森林太郎は退官して森鴎外として文筆一本。大正10年、慶應大、大森健太教授が脚気の軽症者と健康者6人に対し、ビタミンB欠乏食事を投与して、脚気を発症させ、ビタミンB1投与で回復。

○ 食生活の現状と食育の必要性:朝食欠食状況、*平成12年度児童生徒の食生活等実態調査、平成17年度私学大学医学部/朝食の欠食率、H15年国民健康?栄養調査/私立大学医学生住居別朝食欠食状況(H15年)/私立大学医学生留年の経験と朝食欠食状況(H15年)/私立大学医学生の健康配慮と朝食欠食状況(H15)/朝食欠食の理由(H12年度児童生徒の食生活等実態調査)/月残業時間別食事摂取状況(某IT産業事業所調査)/野菜摂取量(男性)平成15年国民健康?栄養調査/野菜摂取量(女性)平成15年国民健康?栄養調査/

○ 食生活の問題点:朝食の欠食。孤食(個食)、固食?粉食?子食?小食?濃食(6こ)。ファーストフード?脂肪摂取量増加。間食。伝統食(低脂肪、低カロリー、多種食材)減少。 米の消費:1960年118kg/人?年?1998年65kg/人?年。速食?ながら食。女性の社会進出 +長時間労働?家族団欒食減少。

○ 特定健康診査?特定保健指導について:メタボリックシンドロームの概念を予防に導入。

○ 病気の発生:外部要因(病原体、有害物質、事故、ストレッサー)。生活習慣要因(食生活、運動、喫煙、休養)。遺伝要因(加齢、遺伝子異常など)。

○ 生活習慣病対策について/生活習慣病の発症?重症化予防/生活習慣病のイメージ

○ メタボリックシンドロームの概念を導入:メカニズムを理解すれば、保健指導で予防が可能?保健指導の対象者が明確になる?内臓脂肪の改善で予防できる対象を絞り込むことがで きる?リスクの数に応じて保健指導に優先順位をつけることができる?腹囲という分かりやすい基準により、生活習慣の改善による成果を自分で確認?評価できる。

○ 医療制度構造改革のポイント:生活習慣病対策が一丁目1番地?国民皆保険制度を持続可能なものとするために将来の医療費の伸びを抑えることが重要?今回の改革のポイントは以下の3つ、1) 健診?保健指導にメタボリックシンドロームの概念を導入 2) 糖尿病等の生活習慣病有病者?予備群25%の削減目標を設定 3) 医療保険者に健診?保健指導を義務化。

○ 食科学の重要性:食品の安全性の観点から感じる不安の程度/食品保健:食品の安全確保。 平成8年3月人へのBSE感染指摘。平成13年9月国内初のBSE感染牛発生。平成15年5月食品安全基本法成立。7月施行?食品安全確保の指針。内閣府に食品安全委員会設置。遺伝子組換え食品の安全性審査。食品の表示。食中毒:平成8年O157集団食中毒、ノロウイルス。食品添加物、残留農薬、器具と容器包装。

○ 食育基本法の背景:栄養の偏り/不規則な食事/肥満や生活習慣病の増加/過度の痩身志向/食の安全/食の海外への依存:食料自給率約4割/伝統的食文化の喪失。

○ 食育とは:食を中心に、様々なことを学ぶ。生きる上での基本であって、知育、徳育、体育の基礎となるべきもの。さまざまな経験を通じて「食」に対する知識と、「食」を選択する 力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てること。子供たちに対する食育は、心身の成長および人格の形成に影響を与える。

○ 食育基本法成立までの経緯:平成14年11月食育調査会が自民党政務調査会に設置。平成15年6月「中間とりまとめ」官房長官、財務、文部科学、厚生労働、農林水産等関係8大臣に申し入れ。16年4月「食育調査会食育基本法プロジェクトチーム」設置。17年6月10日成立、同年7月15日実施。

○ 都市と農山漁村の共生?対流:農林漁業体験や田舎暮らしなどの都市と農山漁村を行き交う 新たなライフスタイルを広め「人?物?情報」の行き来を活発にする。消費者と生産者の「顔の見える関係」を構築する。信頼関係を築き、消費者に安心感、無駄な消費をなくす。

○ 都市住民の農山漁村に住む希望(平成15年都市と農山漁村の共生?対流に関する世論調査)

○ なぜ食育が医療系学生にも必要か:知育、徳育、技育、体育の基盤に食育。医療者は食生活 について、地域?職域の健康人、有病者に食育を行う機会がある。学生の時期に、食生活の重要性を認識し、具体的な実施法、教育法について習得しておくことが必要。栄養機能食品、特定保健食品の設定(保健機能食品制度)。

○ 食科学の提言:食育の科学的基盤。広くは、食の安全、栄養、食文化、調理技術、社会?環境など包括的総合科学。学問分野としては、食品衛生学、食品科学、栄養学を基盤とする科学。農医連携の接点として重要。

○ 健康状態と保健医療/食科学と健康/食科学の体系

○ 工から農へ(sustainability):Sustainability is a systemic concept, relating to the continuity of economic, social, institutional and environmental aspects of human society. サステイナビリティ学の創生(東大総長小宮山宏氏)。工業化?消費社会?地 球の温暖化により気候変動?食料危機。消費奨励から資源確保へ?工業から農業へ:持続型循環型社会=「もったいない」優先社会。横浜市資源循環局=廃棄物。

○ 農医連携センターの業務(図1)/農医連携概念図(図2)/農医連携の具体案(図3)

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図1:提案農医連携センターの業務

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図2:農医連携概念図

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図3:農医連携の具体案
3.農学からみた農医連携

○ 講義内容:代替医療と代替農業/農医連携:Agromedicine/地理医学:Medical Geology/土と人/土の健康と人の健康/どうしたらいいか/カエルの悲劇

○ 代替医療の周辺:伝統医学(アーユルヴェーダなど)、民族医学(アロマ療法など)、新興医学(カイロプラクティックなど)など。Complementary and Alternative Medicine(CAM):補完代替医療は、西洋医学を中心とした近代医療に対して、それを補完する医療をさした。eCAM:Evidence-based Complementary and Alternative Medicineの考え方(証明)が登場した。なお、代替医療という言葉は「代替医療のすすめ」の著者廣瀬輝夫氏が論文執筆のときはじめて使用。

○ 代替農業の周辺:わが国においては、代替農業といえるさまざまな農法がある(環境保全型農業、有機農業など)。久馬一剛?嘉田良平?西村和雄監訳の「代替農業‐永続可能な農業 をもとめて‐」(1992)がある。アメリカでは、「American Society of Alternative Agriculture」や「American Journal of Alternative Agriculture」がある。全米研究協議会リポート「Alternative Agriculture」(1989)がある。

○ 農医連携:アメリカにはAgromedicineという概念がある。Journal of Agromedicineという雑誌が1995年に創刊されている。今も継続的に出版されている。季刊誌である。内容は、Practice, policy and research = 実施?政策?研究に分かれている。

モットーは、Interface of human health and agriculture= 健康と農業の調和で、The Haworth Medical Press and Food Production Press= 医療と農業関係の協力出版である。

○ Medical Geology (Geomedicine):Medical Geology とGeomedicine とは同義語で、とくに北欧の国々ではGeomedicine、国際的にはMedical Geology と称されている。定義は、The branch of medicine dealing with the influence of climate and environmental conditions on health.

「気候や環境条件が人や動物の健康に及ぼす影響を扱う医学部門」と訳しうる。わが国では、地質汚染‐医療地質‐社会地質学会(The Japanese Society of Geo-Pollution Science, Medical Geology and Urban Geology)が2004年12月に設立され、ここではMedical Geology を医療地質と訳している。またこの問題に関連する論文などをみると、地理医学的などとも訳されている。

○ 地質医学:人と動物に関わる健康を病理、毒性、地質、重金属、地理、地形、土壌、水質、食物、食品などあらゆる環境要因から追求する学問(2007:スウェーデン)

○ ルドルフ?シュタイナー:不健康な土壌からとれた食物をたべているかぎり、魂は自らを肉体の牢獄から解放するためのスタミナを欠いたままだろう。Rudolf Steiner (1861-1925) は、オーストリア帝国出身の神秘思想家。人智学の創始者。哲学博士。

○ ノーベル賞受賞者:アレキシス?カレル(1912年):地球は病んでいる‐それもほとんど回復できないほどに‐。土壌が人間生活全般の基礎なのであるから、私たちが近代的農業経済学のやり方によって崩壊させてきた土壌に再び調和をもたらす以外に、健康な世界がやってくる見込みはない。生き物はすべて土壌の肥沃度(地力)に応じて健康か不健康になる。

カレルは、「文明が進歩すればするほど、文明は自然食から遠ざかる」とも言っている。今日われわれが毎日飲む水、常時呼吸する大気、種子を植え付ける土壌、毎日食べる食品のいずれにも何らかの合成化学物質が共存している。さらに食品には、着色、漂白、加熱、保存加工のために合成化学物質が添加されている。

カレルは、「土壌が人間生活全般の基礎なのであるから、私たちが近代的農業経済学のやり方によって崩壊させてきた土壌に再び調和をもたらす以外に、健康な世界がやってくる見込みはない。生き物はすべて土壌の肥沃度(地力)に応じて健康か不健康になる」と、農と環境と医療が連携していることを早くから指摘した。

これまで、多くの土壌は酷使され、さらに消耗され続けてきた。そのうえ、多くの土壌にはさまざまな化学合成物質が添加されてきた。従って、土壌全般が必ずしも健全な状態にあるとは言い難い。そのため、その地で生産される食物の質は損なわれ、それが原因となって、われわれの健康も損なわれかねない状況にある。カレルの言うように、栄養のアンバランスも有害成分も土壌から始まっていると言っても過言ではない。

○ 医食同源:病気を治すのも食事をするのも、生命を養い健康を保つためで、その本質は同じという意味であろう。人びとが積み重ねてきた生活から培われた一種の知恵である。この言葉が最初に見られるのは、丹波康頼(永観2年:984)によって著された最古の医書(医心方:いしんぽう)といわれる。また、大辞林によれば、「病気の治療も普段の食事もともに人間の生命を養い健康を維持するためのもので、その源は同じであるとする考え方。中国で古くから言われる。」とあるが、日本人の造語。

○ 身土不二:わが国には「身土不二」という言葉がある。この言葉の語源は、古い中国の仏教書「廬山蓮宗寶鑑」(1305年)にある。本来の意味は、仏心と仏土は不二であることを示したものだそうである。この言葉は、食と風土と健康に強い関心を抱くかぎられた人たちの間で、いわば内輪の規範として用いられていたが、近年一般の人たちの間にも広がりつつある。土が人の命、命は土、人間は土そのものと解釈される。広く解釈すれば、「医食同源」や「四方四里に病なし」や「地産地消」なる言葉もこれらの範疇に属するであろう。韓国でも使われている。

○ 農‐環境‐医療の変遷
 環境医療
家族的重金属病理解剖
集約的湖沼富栄養公衆衛生
空間流通温暖化ガス感染制御
時間凍結保存ダイオキシン凍結保存
意識倫理?安全倫理?安全倫理?安全
○ 大地?海原?天空からの悲鳴:大地から、海原から、そして天空から痛切な悲鳴が聞こえる。土壌浸食、砂漠化、重金属汚染、地下水汚染、熱帯林の伐採、鳥インフルエンザなどの悲鳴は大地から、富栄養化、エルニーニョ現象、赤潮、青潮、原油汚染、浮遊物汚染、海面上昇などは海原から、温暖化、オゾン層破壊、酸性雨、大気汚染などは天空から。悲鳴の原因は数知れない。大地と海原と天空は、まちがいなく病んでいる。

○ 次は、微生物?植物?動物、そして人間からの悲鳴? わが国でも、微生物から、植物から、動物から痛切な悲鳴が聞こえている。耐性菌による野生生物汚染(ライチョウ)は微生物から、サンゴの白化、ミズバショウの富栄養化は植物から、アルゼンチンアリの猛威、大型クラゲの大発生、マイワシの激減は動物から、そして、人間からは?農と環境と医療の連携の重要性がここにもある。

○ 幼児の弾むような健康を求めて:笑顔の幼児の弾むような健康は、その子どもたちの体が健全な食物と良好な環境に依存しているであろうことに疑いない。土壌の成分が植物、動物、人間の細胞の代謝をコントロールしている。微生物やウイルスを除くほとんどの病気は、人間が生きていくうえで必要な空気や水や土壌や食物に含まれる元素間の調和が崩れることによって生じる。なかでも食の基となる土壌のなかの元素のバランスが、最も重要である。
土の健康(農)     =人の健康(医)
 重金属汚染重金属摂取
 廃棄物添加物
 過剰農薬過剰医薬
 過剰肥料過剰栄養
 成分バランス栄養バランス
 健全な呼吸健全な呼吸
 ダイオキシン類汚染ダイオキシン類摂取
 地力増進健康増進
 休閑休息
○ カエルの悲劇:水と熱いお湯を入れた鍋を二つ用意する。蛙を熱いお湯に入れると、驚いて飛び上がる。しかし、冷たい水の中にいる状態で、鍋を徐々に過熱すると、蛙は静かなままだ。蛙は変温動物なので、徐々に熱くなっていくお湯の中では、蛙の神経は感覚を失うから だ。蛙は熱くなっていくお湯の中で危機を感じず、適応しようと努力していくうちに神経が無感覚になり、完全に煮られて死んでしまうのである。迫ってくる危険を知らずに、死んで いく蛙を見ながら、私たちは一つの教訓を得る。だが、実際に自分たちに迫ってくる危険を感知できる人はそう多くない。
第5回博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@農医連携シンポジウムの内容:(8)総合討論とアンケート結果
平成20年3月25日に開催された第5回博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@農医連携シンポジウムの講演内容は、これまで博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@学長室通信「情報:農と環境と医療 37, 38, 39号」で紹介してきた。ここでは、講演の概要、総合討論およびアンケート結果を紹介する。

シンポジウムの開催にあたり、博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@の柴 忠義学長の挨拶があった。そこでは、博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@が農医連携という概念を発信してからの2年有余の経過が語られた。

その中で、博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@内に農医連携委員会が設立され、委員会が「博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@農医連携構想について」をまとめ、答申したことの報告があった。また、「博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@学長室通信:農と環境と医療」を毎月発刊していること、医学部および獣医学部に「農医連携に関わる講義と演習」が開講されていること、新たに一般教育部の科目に「教養演習B:農医連携論」が加わったこと、学部を超えたオール博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@としての農医連携に関する研究プロジェクトを推進しようとしていることなどが紹介された。さらに、温暖化の重要性が説かれ、今回のシンポジウムが時宜に合ったものであることが語られた。

これを受けて、まず「IPCC報告書の流れとわが国の温暖化現象」と題して、1990年から始まったIPCCの第一次報告書から2007年の第四次報告書の流れが紹介された。併せて、地球生命権GAIAに関する本の紹介とわが国の温暖化現象が解説された。

その後、環境の視点から「温暖化による陸域生態系への影響評価と適応技術」と題して、近年の地球環境の観察結果の要約が紹介された。さらに将来予測についてのシナリオが示された。

また、農学の視点から「農業生態系における温室効果ガス発生量の評価と制御技術の開発」と題して、農業生態系から発生する温室効果ガスである二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素の発生量の推移と、これらガスの発生を制御する技術の紹介があった。

続いて、人間の健康の視点から「気候変動による感染症を中心とした健康影響」と題して、気候変動に伴うさまざまな健康影響が紹介された。加えて、気候変動の感染症に影響を与えるメカニズムについての紹介があった。

その後「IPCCの今」と題して、22年経過したIPCCの活動が、WMOおよびUNEPとの関連で解説された。さらに、IPCCが目指している第五次報告書作成の計画が紹介された。

最後に「気候変動の影響?適応と緩和策‐統合報告書の知見‐」と題して、IPCC第四次評価報告書と統合報告書、第四次報告書の意義、今後の展開と日本の貢献、などが解説された。

総合討論とアンケート

これらの講演が終わった後、林 陽生氏と陽 捷行が座長を務め総合討論が行われた。総合討論の時間は、講演が濃密であったため僅か30分しかなかったが、興味ある質問と意見、講演者の適切な回答に会場は熱気に包まれた。いずれも農医連携の必要性を前提にした貴重な質問と意見であった。

質問および討論の内容は、COPとIPCCの関連、CO2濃度上昇と温度変化の関係、途上国の感染症の実態、地球温暖化の影響、俯瞰的に観る教育の促進などであった。

総合討論を終えた後、参加者のうち40名の方からアンケートをいただいた。アンケートの内容は、1) 農医連携の在り方、2) 温暖化に関する知見、3) 運営の在り方、に分け、以下にその内容を示した。

農医連携の在り方

  • 期待した以上に興味深いものでした。地球物理、地球科学の視点からの地球温暖化については多少関心もあり、知識もあったつもりですが、農?医療の視点に、ある部分、目を開かされた感じです。まさにガイアという総合的な視座なのでしょうか。IPCC Todayも、大変面白かったし、見事な日本語に感心しました。〔60代?男〕
  • 複合領域は今後更に重要になると考えます。今後とも一歩先を行く情報発信をお願いします。また、今後のイベント情報、出版情報などについての情報をお送りいただければ幸いです。ご検討をよろしくお願いします。発表スライドをwebで見られるようにしていただくことを併せて希望します。〔40代?男〕
  • 食料問題(安全?安心)を中心に、生産者‐流通‐消費者‐健康の流れに沿った話題提供を希望します。食料の自給、フードマイレージ、輸入にともなう健康問題へのリスクなど。〔50代?男〕
  • 今回のテーマで、さらに行政、農家などの様々な分野の方に講演いただきたい。または「食糧自給率」でも結構です。〔30代?女〕
  • 環境問題を考える上で、この連携は極めて重要。〔70代?男〕
  • アレルギーの問題をテーマとした、農、環境、医療部門での研究の最前線を紹介していただくのも興味があります。ただ、実現しても私は専門外なので出席できそうもないのですが。本で読みます。〔50代?男〕
  • あん先生の「農水省の存在感が殆どない」は、大変残念だが事実でしょう。八木先生の言う「環境問題は日本の農業にとってチャンス」になるようにして欲しい。〔60代?記載なし〕
  • 「農と環境と医療」は「健康」と密接不離の関係にあるが、「環境」と「経済」は敵対関係にある。「科学」は「経済」の味方になっていないか?「環境」の一番の味方になるのは「宗教(信仰)」だと思うが、「科学」は「宗教(信仰)」を目の敵にせず、「科学」と「宗教(信仰)」が協力して「環境」を守るべきではないか?「宗教(信仰)」を無視した「科学」や「経済」「社会」などが、環境問題を起こしていると思う。〔50代?男〕
  • 農医連携は素晴らしいと思う。研究者は専門分野での研究にとどまり、今、複合、統合的な視野をもって環境(食?農)の問題を考える時代なのだと思う。〔20代?男〕
  • 研究者レベルの講師が多いので、いつかは現場で働いている研究者などの発表、それを評価できる取り組み(シンポジウム)が必要だ。1.有機農業と食と健康について(栄養?ミネラル?地産地消)フードマイレージなど)、2.有機農業推進法と政策と現状と今後の取り組み、3.女性の発表者を増やして欲しい。〔50代?男〕
  • この連携をこれからの時代、必要な知識の蓄積になっていくと思います。非常に質の高いシンポジウムでこれからもできる限り参加したいと思います。〔30代?男〕
  • とてもよいことだと思います。一つのことでも様々な視点から見るべきだと思う。〔20代?女〕
  • CO2、CH4、NO2:人の食物(サプリメントや予防医療剤etc.)による人の出す「CO2、CH4、NO2」ガスの発生量抑制の可能性も勉強できればと思います。〔60代?男〕
  • 農 ←→食糧 環境 医療←→健康
    上記を語るときに「水」を避けて説明することはできないと考える。よって、我が国の農業政策と食料自給率の改善、および「安全?安心な農法」等をテーマとした話を聞かせて欲しい。〔60代?男〕
  • 環境と医療を考慮した上で良い食料をつくることをもっと根本から考えるべき。環境にも体にも良い食料が大切。〔記載なし〕
  • 農は環境を無視して存在できないことは広く認知されているので、つまり農=環境と統一して捉え、今後は農と医療との連携を中心に企画したらいかがでしょうか。〔60代?男〕
  • 栄養系の講師の参画を希望します。〔60代?男〕
  • 非常に大切なシンポジウムであり、もっと多くの人に参加して欲しい。〔記載なし〕

温暖化に関する知見

  • 最新の動向について知ることができて良かったです。関連論文リストをまとめることができれば有意義ではないかと思います。〔40代?男〕
  • 温暖化に関してのこれまでの理解が不十分であることがよく認識できました。不確実性の評価に関してモデリングとモニタリングについての発表があっても良いかと思いました。〔30代?男〕
  • 多方面からの講演内容でとても勉強になりました。モニタリングや影響評価が重要だということがわかりましたが、国内においてその意識が薄いように思われます。政策も含めて国(行政)がどのように考えているかを知りたいと思いました。また、適応策や緩和策について関心を持ちました。IPCCがそれらに積極的に関わる(評価する)ようになったら、より良 くなるのでは。〔30代?女〕
  • IPCCの位置付けを含めた地球温暖化対策の枠組みについて理解が進んだ。〔40代?男〕
  • 主観で申し訳ないですが、あんさんの言いたいことが今いち伝わってこなかった。陽さんの立場は面白いと思う。興味深い(温暖化と文化)。〔20代?男〕
  • 今回のテーマは非常に重大なものであったのに、参加者が少なかったことには驚いた。呼びかけ方法に問題があったのかも知れない。内容は多岐に亘り興味が湧くものであった。タイムリーなテーマであったのに興味が持てなかったのは、テーマの持ち方が従来的であるからだろう。〔50代?男〕
  • IPCCの歴史、組織、活動内容について理解することができた。〔60代?男〕
  • 大変幅広いテーマについて、わかりやすいお話を聴かせていただきました。今日勉強したことを自分の生活にどのように活かしていくか考えながら実行したいと思います。〔60代?男〕

運営の在り方

  • 多くの人が参加可能な曜日、時間を考えても良いと思う。〔60代?男〕
  • 発表内容にあった抄録にして欲しい。重要なスライドも載せて欲しい。〔40代?男〕
  • 農、環境、医療、各部門の温暖化についての現状を聞くことができて良かった。〔30代?男〕
  • 配付資料が講演に活かしきれていなかった。講演内容(PPT)と資料とが一致していない部分があり、わかりづらかった。〔50代?男〕
  • とても良いシンポジウムで、タイミングも良かったと思います。今後の活動を期待しています。〔70代?男〕
  • 学生の参加者はいないのですか。〔50代?男〕
  • 学生の参加が少ないですね。〔30代?男〕
  • 終了の時間を4時30分~5時頃にしていただけると助かります。〔50代?男〕
  • 会場が寒い。温暖化問題のシンポジウムなら、ムダな冷房を止めてもらいたい。〔50代?男〕
  • 会社勤めの方は参加困難。〔60代?男〕
  • 多方面にバランスのとれたものになっていると思います。大変勉強になりました。〔50代?男〕
  • プログラムテーマを絞って、説明時間を60~100分くらいの中で奥行きのあるものにして欲しい。〔60代?男〕
  • 各担当先生のテーマの分野が広いのに、時間が足りない。土曜日の午前9時から1日が良い。現役の専門家が集まりやすいと思う。〔記載なし〕
  • 興味深い議題なのだからもっと一般にPRをしていくべき。〔30代?男〕
  • 本年度は温暖化に係る講演会、シンポジウムが色々な場所で行われた。最後に行われたためか、これまでに聴いた内容が多かった人がいた。対策?適応技術についてもっと突っ込んだ 内容が聴きたかった。〔40代?男〕
  • 冊子とあわせて、講演のパワーポイント画面のコピー(白黒でOK)があるとよりわかりやすいし、親切ではないでしょうか。〔60代?男〕
  • 第6回、第7回のシンポジウムの情報はどうすれば入手できるのですか。〔70代?男〕

最後に、総合討論に熱心に参加され、アンケートを快くお引き受けいただいた参加者に、この情報を借りてお礼申し上げる。なお第6回博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@農医連携シンポジウムは、「食の安全と予防医療」を10月24日に開催する予定である。
言葉の散策 24:看護と「みる」
語源を訪ねる 語意の真実を知る 語義の変化を認める
 そして 言葉の豊かさを感じ これを守る

看護の定義は専門家に任せるとして、日本国語大事典には、「けが人や病人などの手当をし世話すること。看病。かんがく」とある。

「うぶすな書院」の「看護覚え書」には、フローレンス?ナイチンゲール(1820~1910)の「看護覚え書」が次のように書いてある。「看護はすべての患者に対して生命力の消耗を最小限度にするよう働きかけることを意味する」。すなわち、看護とは患者に新鮮な空気、太陽の光を与え、暖かさと清潔を保ち、環境の静けさを保持するとともに、適切な食事を選んで与えることによって健康を管理することであるとしている。とりもなおさず、健全な生活環境を整え、日常生活が支障なく送れるよう配慮することが看護なのだ。

保健師助産師看護師法:第5条「看護師の定義」では、次のように書いてある。「看護師とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじょくふ(褥婦:筆者注)に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう(1951)」。

また、保健師助産師看護師法で、保健師?助産師?看護師の3つの資格はいずれも看護を行う者である、とされており、この3者を看護職と呼ぶ。

いずれも、患者や褥婦や病人などと、その人たちの日常生活が快適に送れるように環境を看る人のことをいう。

白川 静の「字通」によれば、看は会意で、手+目である。手をかざして遠く望み見ることをいう。意味は、1) みる、手かざして見る、のぞむ。2) あう、みまう、みまもる、もてなす。3)心にさとる、えとくする。

漢字は中国の古代の人間が創りだしたものだ。彼らも、今のわれわれと同じような恰好で手を頭にかざし遠くを看たと想うと、人間の動作の変わりなさに、微笑みが湧いてくる。

「みる」に、「目る」「見る」「看る」「省る」「相る」「眼る」「視る」「診る」「督る」「察る」「監る」「覧る」「観る」「鑑る」がある。これらは常用漢字に属する。他にも見慣れた漢字に、「瞰る」「瞥る」「瞻る」「矚る」などがある。「字通」には3字の旧字を含めて44字の「みる」がある。このうち常用漢字の「みる」は上に示した14字である。

以下、「みる」の漢字を「字通」をもとに眺め、「みる」ことの意味を考えてみたい。

「矚る」:目をつけて離さない、何かを期待してじっと注目する。会意兼形成で、蜀は桑の葉について離れぬ虫。属は交尾して尻をくっつけて離さないこと。みる。よくみる。みつめる。みつづける。

「瞻る」:「説文」に「臨み視るなり」とあり、瞻望?瞻迎など、遠く遙かに望み、また見めぐらす意がある。みる。みはるかす。みあげる。みおろす。みめぐらす。

「瞥る」:「説文」に「過目なり」とし、また「一に曰く、財(づわ)かに見るなりという。一瞥、瞥見のように用い、ちらりと目翳(もくえい、注:ひとみに翳「くもり」ができる。そこひ)の動くことをいう。みる。ちらりとみる。

「瞰る」:「広雅、釈詁一」に「視るなり」とあり、遠く望み、また遙かに見おろすことをいう。敢は酒をそそいで清めること。廟門で儀礼をして、神意をうかがったものであろう。みる。うかがう。うかがいみる。

さて、常用漢字の「みる」を調べてみよう。「目る」:「説文」に「人の眼なり。象形」とし、「童子(瞳)を重ぬるなり」、すなわち重童子(ちょうどうし)であるという。目を動詞にして、目撃?目送のように用いる。また眉目は最も目立つところであるから、標目?要目のようにいう。みる。みつめる。めくばせする。ながめる。

「見る」:目を種とした人の形。「説文」に「視るなり」とあり、視るとは神(示)を見ることである。新しい父母の位牌を拝することを親という。みる。みえる。

「看る」:手+目。手をかざしてものを見る意。「説文」に「no40_gaiji01.jpgみるなり」とあり、手をかざして遠くを望み見ることをいう。手をかざしてみる。のぞむ。

「省る」:「説文」にno40_gaiji02.jpg(つて)に従う形とし、「視るなり、眉の省に従ひ、no40_gaiji02.jpgに従ふ」という。「段注」に「眉に従ふ者は、未だ目に形(あら)はれざるなり。no40_gaiji02.jpgに従ふ者は之を微に察するなり」とするが、no40_gaiji02.jpgはおそらくもと目の上の呪飾であろう。めぐりみる。つまびらかにみる。

「相る」:木+目。「説文」に「省視するなり」とあって、見ることを本義とする。古代の呪儀を背景とする字であろう。みさだめる。くわしくみる。

「眼る」:「説文」に「目なり」とあり、目は象形。眼は限字の従うところの艮と同じく、艮は呪眼を掲げて聖所に立ち入ることを禁ずる形であるから、眼とは呪眼をいう。まなこ。視力のあるところ。

「視る」:「説文」に「瞻るなり」と訓す。「臨み視るなり」とあり、神の降鑒することをいう。神意をみる。仰ぎみる。察する。

「診る」:「説文」に「視るなり」とあり、「其のいた疾む所を診る」のように診察することをいう。みる。よくみる。病状をみる。

「督る」:「説文」に「察するなり」と督察の意とする。みる。よくみる。監督する。

「察る」:「説」文に「覆審するなり」とあり、「新書、道術」に「讖微(しんび)皆審(つまび)かにする、之を察と謂ふ」とみえる。神意を明察にすること。あきらかにする。あきらか。みる。神意をみる。神意があらわれる。

「監る」:臥+皿。臥は人が臥して家宝を視る形。皿は盤。盤水に臨んでその姿を映す意で、いわゆる水鏡。金文に「監司」という語があり、もと天より監臨することをいう。かがみにうつす。上からみる。のぞみみる。みる。みはる。めつけ。

「覧る」:監+見。監は水盥(皿)のうえに顔を出して面を映す形。その映る面を見ることを覧という。天上より俯して下界を見る意。尊貴の人の行為をいう。御覧を本義とする字である。みる。よくみる。ながめる、みわたす。のぞむ。ながめ。

「観る」:「説文」に「諦視するなり」とあって、審らかに視る意とする。観とは鳥占いによって神意を察することであろう。みる。つまびらかにする。みきわめる。

「鑑る」:監は盤に水を盛り、顔容を水鑑として映す意。かがみにうつす。みわける。てらす。かんがえる。

以上、「みる」という多くの漢字が、いかに深くて複雑な意味をもっているかを自ら噛みしめるつもりで長々と紹介した。宮城谷昌光の「王家の風日」は、商(殷)から周に王朝が変わる紀元前11世紀の古代中国を舞台にした小説で、商を支えようとした箕子を中心に商王朝の滅亡が描かれている。この小説の中には、原義にそって多くの「みる」という漢字が使われており、「みる」ことの重要さが得心できる。

若い頃みた東大寺の仏殿の鴨居に掛けられていた「正見」という漢字が忘れられない。この「正見」は、釈迦が説いた八正道の一つだ。「正しくみる」ひとつとっても、これだけ数多くの漢字の「みる」があるのだから、残りの正思惟?正語?正業?正精進?正命?正念?正定を知るのに一生は短すぎる。われら凡人には、八生あっても足りはしまい。
*本情報誌の無断転用はお断りします。
博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@学長通信
情報:農と環境と医療40号
編集?発行 博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@学長室
発行日 2008年7月1日