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感覚?運動統御医科学群 視覚情報科学
飯塚 達也
自己紹介をお願いします
帝京大学医療技術学部で視能矯正?眼科学を学び、2019年に視能訓練士の免許を取得しました。
その後、博狗体育在线_狗博体育直播【官方授权网站】@医療衛生学部の視能検査学研究室にて視覚研究に従事し、2020年には同大学院医療系研究科修士課程(医科学)に入学し、現在は博士課程(医学)に在籍しています。大学院では視覚情報科学研究室で医療の垣根を越え視覚に関連する様々な研究をしています。
人間の眼がカメラと比較されることがありますが、私が視覚研究に興味を持ったのは、夜間の写真撮影におけるカメラと人間の眼の違いに驚いたことからです。
日中は人の眼とカメラの見え方がほぼ同じである一方で、夜間では明暗の差が大きくなることで、カメラでは全体像をとらえるのが困難となり、眼の光を受容し処理する能力の素晴らしさに魅了され、視覚のメカニズムに深い興味を持ちました。
研究の概要について
大学院での主な研究テーマは「視覚×交通安全」です。具体的には、①薄明や夜間の視機能や色覚に関する研究、②歩行者の視認性に関する研究、③ヘッドライトの眩しさ(羞明)に関する研究を行っています。
①は研究に興味を持ったきっかけでもあり、夜間での視界の見えにくさを経験したことが誰にでもあると思います。夜間では瞳孔が開き、眼球の収差が増え、焦点深度が浅くなり、網膜照度の低下に伴い錐体細胞の活動低下など、多くの視覚機能の変化が生じます。研究ではこれらの変化の相対的な影響を特定し、米国検眼学会の専門雑誌に報告しました。色覚はカラーランドルト環を使用したCone Contrast Testにおける白内障手術後の視覚の質や色覚診断への臨床応用の可能性、加齢による影響を米国光学会の専門雑誌に報告しました。
②では、交通事故から歩行者を守るために、視覚設計を応用した一般利用者向けの高視認性安全服の規格に関する研究を行い、その成果をPublic Library of Science社の科学雑誌に報告しました。2024年4月からは、運転者の「疲れ目」に焦点を当てた新しい研究を開始しています。
③では、ヘッドライトの眩しさを防ぐためにフロントガラスや眼鏡レンズの透過率に着目した研究を行い、その成果をThe 14th Asia Lighting Conferenceや照明学会へ研究報告をしました。
研究の魅力について
研究の魅力は、未知への探求と新たな知見の発見にあります。
私が取り組む「視覚×交通安全」研究では、夜間の視機能や歩行者の視認性、ヘッドライトの眩しさによる影響など、日常生活に密接に関わるテーマを探究しています。
これらの研究を通じて、夜間の視界を改善し交通事故を減少させる方法を模索することは、科学的探求だけでなく、社会への直接的な貢献も意味します。研究過程で遭遇する困難や挑戦を乗り越え、新しい解決策や知識を生み出す過程は、研究者としての成長はもちろん、人々の生活を豊かにする大きな喜びとなります。研究は単に答えを見つけ出すことではなく、より良い社会への一歩を踏み出すことに他なりません。
研究内容と社会への貢献や関連性について
日本における交通事故の件数は年々減少していますが、2023年には307,930件に上り、依然として大きな社会的課題であるといえます。
私は、「視覚×交通安全」に関する研究を通じて、この問題に貢献したいと考えています。特に、交通事故が多く発生する薄暮や夜間は、視機能の変化が大きいため、夜間の視機能の改善は交通事故のリスクを低減することに直接繋がります。
例えば、運転時の視機能を最適化するためのアプローチ(眼屈折や収差の補正)は、運転能力向上に寄与し、結果として事故リスクの低下に貢献します。
研究における今後の課題と展望について
夜間の視機能を評価する現行の方法は、光の明るさを調節するという単純な手法に依存していますが、実際の暗い環境での視覚は大きく変化するため、多くの課題が生じており、標準化された評価方法はありません。これは夜間の視機能を最適化する上で大きな課題となり、信頼性の高い評価法の開発が求められます。
さらに、近年のヘッドライトは照明技術の発展により、明るさが増し安全性は向上していますが、対向車の眩しい光による不快感は増加しています。この問題を解決するために、眩しさを軽減しつつ視機能を確保できる眼鏡や眼に優しい照明の開発、さらには歩行者の安全を確保する視認性の高い安全服の開発など、視覚設計を活用した交通事故対策の推進が必要です。
私はこれらの課題に対して、研究を進め、社会への貢献を目指しています。
大学院に進学するメリットについて
医療系研究科では例年、院生プロジェクト研究の募集があり、大学院生で研究助成金を獲得できる機会があります。
特に、研究成果よりも研究課程を重視するプロジェクトなため、学部を卒業したばかりの修士課程の学生も応募可能です。
この機会は、研究を企画し実行する能力を養う貴重なものであり、将来的に学外で競争的資金を獲得する際の良い練習になります。たとえプロジェクトに採択されなくても、申請過程で費やした時間は将来的に大きな価値になると確信しています。
進学を目指している方へのメッセージ
私自身、大学院への外部進学を経験しましたが、自分に合った研究環境を見つけることの重要性を強く感じています。
研究には魅力と同時に厳しさも伴いますが、それを乗り越えるためのサポート体制が整っているかどうかも大切です。
私の場合、指導教官とは毎月、研究の進捗について議論しており、このような定期的なフィードバックは非常に貴重なものです。
大学院では、指導教官からの指導が研究を深める上で欠かせません。医療系研究科には、臨床から基礎、応用研究に至るまで多様な研究室がありますので、皆さんにぴったりの研究環境が見つかることを願っています。