臨床医科学
2025.03.27
医療系研究科在学生が第59回日本水環境学会年会で優秀発表賞(クリタ賞)を受賞しました。
本学修士課程2年の三澤香穂さん(指導教員:清和成教授)が、第59回日本水環境学会年会(2025年3月17日?19日:北海道大学)にて研究発表を行い、優秀発表賞(クリタ賞)を受賞しました。
三澤さんは、『都市下水および病院排水を対象とした薬剤耐性の指標としてのクラス1インテグロンの動態解析』について発表を行いました。
概要
抗菌薬に耐性をもった薬剤耐性菌(ARB)の蔓延は、私たちの健康を脅かす世界的な問題です。
ARBは耐性遺伝子(ARGs)を持つことで抗菌薬が効きにくくなりますが、これらARBやARGsは河川や海からも検出されています。私たちが注目した「クラス1インテグロン(intI1)」は、ARBやARGsが存在するか否かを示す指標として使われていますが、その動態は十分に明らかになっていません。
そこで本研究では、都市下水や病院排水から細菌細胞の中にあるDNA(iDNA)と細菌細胞の外にあって水中に浮遊しているDNA(eDNA)を別々に回収して、それぞれのDNAの中にintI1や様々なARGsがどの程度存在しているかを調べました。
その結果、intI1やARGsは各水試料から高い濃度で検出されることがわかりましたが、それらの濃度の関係性は明確にならなかったので、さらなる調査が必要です。
また、都市下水では、水処理工程によってiDNAは濃度が低下する一方で、eDNAは一部で濃度が上昇しました。
さらに、このeDNAは他の細菌細胞の中に導入されることも確認されたので、薬剤耐性が広がるリスクを抑えるためには、ARBだけでなく環境水中で浮遊しているARGsにも注意が必要であることを明らかにしました。