医療系研究科在学生が第37回腎と脂質研究会で優秀発表賞を受賞しました。

本学博士課程3年の佐藤直和さん(指導教員:石井直仁教授)が、第37回腎と脂質研究会(2025年3月29日:レグザムホール)にて研究発表を行い、優秀発表賞を受賞しました。

佐藤さんは、『腎症発症前糖尿病ラットの腎皮質における酸化ストレスが関わるミトコンドリア品質管理機構と脂肪酸代謝』について発表を行いました。

概要

 これまで我々の研究室では、腎症発症前糖尿病ラットの腎皮質において、酸化ストレスマーカーの 3- ニトロチロシンの生成亢進とミトコンドリアのニトロ化タンパク質が同定されたことから、ミトコンドリアが酸化ストレス障害を受けていることを明らかにしました。損傷ミトコンドリアの蓄積は腎症の発症と進展に寄与するため、ミトコンドリアの品質管理が重要です。この品質管理メカニズムとして、損傷ミトコンドリアの分解?除去を担うマイトファジー(ミトコンドリア選択的オートファジー)と、ミトコンドリアにおけるエネルギー生成を担う脂肪酸とその輸送体であるカルニチンの動態については十分に解明されていません。本研究の目的は、腎症発症前糖尿病ラットの腎皮質における、マイトファジーの誘導の有無と、脂肪酸とカルニチンの動態を明らかにすることです。
 結果として、腎症発症前糖尿病の腎皮質ではミトコンドリア膜電位に依存したマイトファジーが誘導されました。また、ω6脂肪酸からω3脂肪酸(抗酸化?血管保護)への代謝シフトが示されました。これらはTLMの抗酸化効果により抑制されたため、酸化ストレスによって誘導される品質管理機構である可能性が示唆されました。

今後の展望

 昨年に引き続き、栄えある賞を賜ることができ、大変光栄に存じます。ひとえに臨床化学研究室の先生方と大学院生による日頃からの温かいご指導と、惜しみないご支援の賜物であり、心より深く感謝申し上げます。
 我々の研究では、糖尿病性腎症におけるミトコンドリアの品質管理メカニズムの解明に取り組んでまいりました。この研究は、腎症の早期診断マーカーの発見や、新たな治療標的の提案へとつながる可能性を秘めており、糖尿病に伴う合併症の予防?管理に大きく貢献できるものと考えております。
 今後も、本研究の成果をさらに発展させ、人々の健康に貢献できるよう、真摯な姿勢で研究活動に邁進してまいります。引き続き、ご指導ご鞭撻の程、よろしくお願い申し上げます。